バッハ演奏の“ヌーベル・バーグ”を体験する
新時代の古楽シーンを牽引するであろうチェンバリストの筆頭が、フランスのバンジャマン・アラール。チャイコフスキー・コンクールやショパン・コンクールに匹敵する、権威あるブルージュ国際古楽コンクールに優勝して注目を集めて以来、ソリスト、ラ・プティット・バンドやヴェニス・バロック・オーケストラ等のチェンバリスト、パリの教会のオルガニストとして活動。古楽を中心としたハイセンスなCDをリリースしているハルモニア・ムンディ・レーベルが、彼一人によるバッハのチェンバロとオルガン作品の全曲録音という壮大なプロジェクトをスタートさせたが、それも頷けよう。ツェンダーやレオンハルトらに代表されるヨーロッパの正統的古楽のDNAを受け継ぎながらも、唯一無二の魅力をもった演奏をする人だからだ。
これまでもラ・プティット・バンドと来日しているが、25歳の2011年にはブランデンブルク協奏曲第5番で目も覚めるような鮮やかなソロを披露して傑出した才能を印象づけた。また、「フランス風序曲」と「イタリア協奏曲」を収録したCDでは、奇を衒うことのない至極真っ当な解釈でありながらも、即興的な装飾音をちりばめつつ、清々しい感興に満ちた名演を聴かせている。
この12月にそんなアラールのチェンバロ・リサイタルが実現する。オール・バッハ・プロで名古屋公演のメインは上述の2曲。武蔵野公演では「イタリア協奏曲」などに加えて、「プレリュード、トリオとフーガ BWV545b」などオルガンも演奏。レオンハルトの後継者の呼び声も高い、若手実力者のソロ・ライヴを目撃せよ。
文:那須田 務
(ぶらあぼ2018年12月号より)
2018.12/4(火)19:00 名古屋/電気文化会館 ザ・コンサートホール
問:クラシック名古屋052-678-5310
http://clanago.com/i-ticket/
2018.12/8(土)17:00 武蔵野市民文化会館(小)
問:武蔵野文化事業団0422-54-2011
http://www.musashino-culture.or.jp/