吉野直子の室内楽 〜ハープで織り成す近現代フランス音楽の世界〜

名手たちが集って醸すフランス音楽の華やぎ

 名実ともに日本のハープ界を牽引してきた第一人者であり、世界的な名手や巨匠たちと共演を重ね続けている吉野直子。長きにわたり最前線で活躍し続けるハーピストが、気心の知れた日本の仲間たちとの共演で、ハープにまつわるフランスの室内楽作品を集めて贈る舞台が、3月に銀座のヤマハホールで実現する。
 吉野を中心として集うのは、成田達輝、小川響子(以上ヴァイオリン)、川本嘉子(ヴィオラ)、伊東裕(チェロ)、佐久間由美子(フルート)、吉田誠(クラリネット)。ベテランと若手の代表的な名手たちがバランスよくそろった、まさに壮観な顔ぶれ。フランスに縁の深いメンバーも多く、高水準のアンサンブルで同国の薫りを楽しませてくれるに違いない。
 作品も多彩で、ドビュッシーとラヴェルの名品を大枠として、その間にフォーレ、ダンディ、メサジェ、フランセ、ロパルツ、ピエルネという、近現代フランスの作曲家たちによる洒落た逸品がずらりと並ぶ。曲ごとに変わる多様な楽器の組み合わせの妙を味わいながら、最後はラヴェルの傑作「序奏とアレグロ」で全員が登場して華やかな終幕を迎える流れも楽しい。
 ハープの響きを柱としながらこれだけの演目が並ぶことは珍しいうえ、吉野を軸に名演奏家たちの共演で一度に堪能できるとあれば見逃せない。しかも会場は、木材を多用した内装で響きの美しさに定評あるヤマハホール。わずか333席の贅沢な環境で過ごす、エスプリと愉悦に満ちたひとときとなる。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2018年1月号より)

2018.3/9(金)19:00 ヤマハホール
問:ヤマハ銀座ビルインフォメーション03-3572-3171
http://www.yamahaginza.com/hall/