パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)

「ウエスト・サイド・ストーリー」は独創的で唯一無二の作品です

C)Julia Baier
 バーンスタイン生誕100年を記念して、パーヴォ・ヤルヴィがNHK交響楽団とともに「ウエスト・サイド・ストーリー」全曲を演奏会形式で上演する。パーヴォにとって、バーンスタインは幼い頃からの憧れの存在だった。
「エストニアに暮らしていた頃、バーンスタインのレコードを聴いたのを思い出します。彼がニューヨーク・フィルと演奏したレコードを父(ネーメ・ヤルヴィ)が外国から持って帰ってきてくれたのです。ハイドンやニールセンの交響曲があったのを覚えています。でも一番夢中になったのはバーンスタインの『ミサ』でした。9、10歳の頃です。毎日、学校に行く前と帰宅後、バーンスタインの『ミサ』を聴いていましたね」
 その後、パーヴォは家族とともにアメリカに渡り、20歳を過ぎた頃、ロサンゼルスでのバーンスタインの指揮クラスに入ることができた。
「ロサンゼルス・フィルハーモニック・インスティテュートに指揮クラスがあり、バーンスタインはそこで教えていました。私はオーディションで選ばれて、受講することができたのです。曲はブラームスの交響曲第4番、『大学祝典序曲』、ドビュッシーの『牧神の午後への前奏曲』など。クラスのレッスンでは、バーンスタインの前でとても緊張して、手の震えが止まらなかったことを思い出します。彼は私のアイドルでしたからね。彼は結果に満足せず、学ぶことを決してやめることのない人でした。私は彼から音楽への姿勢について多大な影響を受けたのです」
 パーヴォは、バーミンガム市交響楽団と録音した「ウエスト・サイド・ストーリー」のシンフォニック・ダンスのCDを残しているが、全曲を指揮するのは今回が初めてだという。
「バーンスタインの生誕100年、しかも大好きな作品ですから、絶好の機会だと思いました。『ウエスト・サイド・ストーリー』はブロードウェイの最高傑作であると同時に、20世紀のオペラの最高傑作の一つでもあると思います。とにかくこんなに質の高い音楽はほとんどない。クラシック、ジャズ、ラテンなどジャンルを超えた様々な音楽の要素を一つにまとめあげたバーンスタインは天才だと思います。まったくもって独創的で唯一無二の作品です。演奏に際しては言葉で表せないスウィング感やスナップ感が大切。N響がよくとりあげるレパートリーではありませんが、才能ある彼らなら大丈夫です。とても期待しています」
 ジュリア・ブロック(マリア)、シャイアン・ジャクソン(トニー)、アマンダ・リン・ボトムス(アニタ)、ティモシー・マクデヴィット(リフ)ほか、キャスティングも万全。最高のステージになることだろう。
取材・文:山田治生
(ぶらあぼ2018年1月号より)

レナード・バーンスタイン生誕100周年記念
パーヴォ・ヤルヴィ&N響「ウエスト・サイド・ストーリー」(演奏会形式)
シンフォニー・コンサート版(原語上演・字幕付)
2018.3/4(日)、3/6(火)各日15:00 Bunkamuraオーチャードホール
問:Bunkamuraチケットセンター03-3477-9999
http://www.bunkamura.co.jp/