クリスチャン・リンドバーグ(指揮)

世界最北の“熱い”北極オーケストラが初来日!

C)Mats Bäcker
 「北極圏の文化の向上」を目指し、ノルウェー政府が2009年に設立したノルウェー・アークティック・フィルハーモニー管弦楽団が、10月に初来日する。覇気溢れるサウンドで、欧州楽壇に“熱い旋風”を巻き起こす“世界最北のオーケストラ”だ。
 「新しいがゆえに悪しき慣習に捉われず、瑞々しい音楽創りが可能。我々と共通する魂を持つ、日本の聴衆に体感してほしい」――首席指揮者にして、名トロンボーン奏者でもあるクリスチャン・リンドバーグは語る。
「世界中で文化予算の縮小が続く中、ノルウェー政府が莫大な資金を新しい楽団の設立に投じたのは、とても素晴らしいことです。そんな楽団のシェフに、スウェーデン人である私が任命されたことも、たいへん名誉です。北極圏の人々が特有の文化を意識することは社会にとっても重要で、その基盤に大きな影響を与えます。この楽団の存在は“北極圏の人々の魂の反映”と言ってもよいでしょう」
 ノルウェー極北部に位置する、ボードーとトロムソの2都市を拠点に活動する。
「楽団員は皆、個性的で魅力的。音楽的にハードな要求も、難なくこなします。そして現地の聴衆は、楽団の誕生以来劇的に成長し、自分たちの街の誇りに感じてくれています。ボードーには魅力的な新しいコンサートホールもでき、トロムソにも計画中。2つの街は、クラシック好きの旅行者にとっても、いっそう魅力的な街になるでしょう」
 世界的なトロンボーン奏者として知られるリンドバーグ。一度は志半ばで諦めた作曲活動を39歳で再開、2000年からは指揮活動もスタートした。
 「その選択は、正しかったようです」と振り返る。そして、来日ツアーでは、チャイコフスキーの後期交響曲がメインに。
「日本の聴衆は耳が肥えているだけに、私たちがどうチャイコフスキーの意図へ近づこうとしているかを理解し、評価してくださるはずです」
 そして、ピアノの名匠ペーター・ヤブロンスキーをソリストに迎え、グリーグの協奏曲を披露。
「魅力的な雰囲気を創り出せる彼との共演に、この傑作はもってこいです。ファンが夢中になること、間違いないと思います」
 さらに、オーレ・オールセン(1850〜1927)の「アースガルズの騎行」と珍しい作品も。
「今や比較的知られているトロンボーン協奏曲をはじめ、最北の作曲家である彼を“発見”したのは、実は私たちです。その音楽はとてもファンタスティックなので、世界に向けて発信したいと考えています」
 「スカンジナビアとロシアの音楽こそ、私たちのレパートリーの心の根幹」と断言する一方、「今後は幅広いレパートリーを視野に入れつつ、録音活動にも注力したい」と話すリンドバーグ。「現在は、来年のレナード・バーンスタイン生誕100周年に向け、彼の交響曲の録音に取り組んでいます」と明かす。
 「とてもワクワクしている」と言う、初の日本ツアー。
「私たちは穏やかな精神と、ノスタルジックでメランコリックな精神を併せ持っています。その気質は日本の方々とも、どこか通じる気がします。公演では、音楽と共に北極圏の豊かな精神を感じ取ってほしいです。そして、帰宅してから後も、ずっと心の中で感じ続けていただければと願っています」
取材・文:寺西 肇
(ぶらあぼ 2017年8月号から)

クリスチャン・リンドバーグ(指揮)
ノルウェー・アークティック・フィルハーモニー管弦楽団
共演:ペーター・ヤブロンスキー(ピアノ)
2017.10/11(水)19:00 静岡/グランシップ(中)
10/12(木)19:00 東京文化会館
10/14(土)15:00 三原市芸術文化センターポポロ
10/16(月)19:00 福岡シンフォニーホール
10/17(火)19:00 大阪/ザ・シンフォニーホール
10/19(木)18:30 岡山シンフォニーホール
問:プロアルテムジケ03-3943-6677
※プログラムは公演により異なります。詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
http://www.proarte.co.jp/