鈴木秀美(指揮) 読売日本交響楽団

清新な躍動と驚愕の神技に耳目が踊る

 ベートーヴェンの交響曲第7番は、古楽系の指揮者で聴くとひと味違った面白さを感じる作品だ。古楽奏法が曲の肝となるリズムの要素を明確に浮き彫りにし、贅肉を落としたサウンドが躍動感を増幅させる。ただ通常のオーケストラでは、古楽・モダン双方の特性を熟知し、確固たる様式感をもった指揮者でこそ、その効果が発揮されるといえるだろう。
 7月の読響定期で7番を振る鈴木秀美は、まさに適任者だ。バロック・チェロの名手として第一線で活躍してきた彼は、オーケストラ・リベラ・クラシカの音楽監督としても高い評価を獲得。近年は山形響の首席客演指揮者を務めるほか、各地のオケでも手腕を発揮し、読響とも2015年にベートーヴェン「英雄」で初共演して成功を収めている。今回は在京モダン・オケでは初の「ベト7」。様式を踏まえたナチュラルな表現の中に情熱と生気漲る音楽が持ち味の彼が、華麗なサウンドの読響で同曲を披露するとなれば、清新・鮮烈な快演への期待に胸が踊る。
 前半は十八番のハイドン。こちらは、珍しい2つの序曲(特に「トビアの帰還」は意外な力作)とホルン、トランペット両協奏曲を並べた選曲がすこぶる興味深い。しかも両協奏曲のソロを同じ奏者が吹くというから驚きだ。ソリストのダヴィッド・ゲリエは、両楽器を巧みに操るフランスの異才。トランペットでは03年ミュンヘン国際コンクールでM.アンドレ以来40年ぶりに1位を獲得し、ホルンではフランス国立管等のソロ奏者を務めている。一夜に両楽器で協奏曲を吹くなど前代未聞。本公演は前後半ともに耳目を離せない。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ 2017年7月号から)

第570回定期演奏会
7/12(水)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390
http://yomikyo.or.jp/