話題の新世代吹奏楽団、ぱんだウインドオーケストラ(ぱんだWO)が、5月にクラシックの殿堂・東京文化会館で公演を行う。まずはこれまでの経緯を、ユーフォニアム界のホープでもある楽団長の佐藤采香から。
「2011年に東京芸大に入学した管打楽器専攻生を中心とした楽団です。1年生のみが受講できる管打合奏の授業が楽しくて、それ以降も毎年コンサートを続け、卒業後の15年12月のメジャーCDデビューを機にプロ活動を行っています。団名の由来は、11年に大学横の上野動物園にやってきた2頭のパンダと、そのような人気者になりたいという願いから。公演のほか『ららら♪クラシック』『題名のない音楽会』等のテレビにも出演し、小編成の『こぱんだ』でも活動。CDも6枚リリースしています」
楽団の特徴を話すのは、コンサートマスターを務めるサクソフォン界期待の星・上野耕平。
「特徴はフレッシュな若い力。『吹奏楽の魅力を伝えていきたい。それにはオリジナル曲を極めるべき』が元々の考えで、編曲ものも『ここでしか聴けない』オリジナリティを追求しています」
山田和樹、藤重佳久など、持ち味の異なる指揮者と共演してきたが、今回は、15年にブザンソン国際指揮者コンクールを23歳で制したアメリカの俊英、ジョナサン・ヘイワードが登場。彼の日本デビューともども、新旋風を予感させる。
「彼はぱんだWOの中心メンバーと同じ1992年生まれ。2つの若いエネルギーがぶつかり合ってどんなものが生まれるか、期待が高まります」(佐藤)
「理屈抜きにワクワクする。早く一緒にやりたいと願うのみです」(上野)
プログラムの柱の1つは、ジョン・マッキーの吹奏楽のための交響曲「ワイン・ダーク・シー」。これは「昨年の吹奏楽コンクールで大流行した」(佐藤)、2014年の新作だ。
「マッキーは、吹奏楽でしか表現できない音色や色彩感をもった作品を多数書いている作曲家。この曲は調性的ながらモダンで、ハーモニーにただならぬオーラがあります。音が鳴った瞬間に空気が変わる独特の色合いを体感して欲しいですね」(上野)
もう1つの柱は、新編曲のクラシック作品。ガーシュウィンの「パリのアメリカ人」(編曲:挾間美帆)とラヴェルの「ボレロ」(編曲:坂東祐大)だ。
「ジャズの世界で大活躍されている挾間さんには、結構踏みこんだアレンジを書いてもらいました。骨組みは原曲に沿いながら、ジャズっぽい遊びのある“再創造”に近い内容です。坂東さんは、我々の2歳上の気鋭作曲家。今回の『ボレロ』は、会場に来た人にしか分からない驚きの演出があります」(上野)
ほかにアルフレッド・リードの「春の猟犬」も演奏される。
「私が大好きな曲。響きに弦楽器のような色彩感があり、流れがとても自然に移り変わる素晴らしい作品です」(佐藤)
なお芸大のお膝元の東京文化会館大ホールは、響きがクリアなので吹奏楽に最適だ。
彼らは吹奏楽を広い層に聴いて欲しいと願う。
「若いぱんだWOは、従来の形に囚われていないのが武器。おなじみの曲も新しいタッチの演奏で、魅力を知ってもらえればと思っています」(佐藤)
「吹奏楽に関わった中高生の多くは、部活引退後に吹奏楽と縁が切れてしまいます。それを何とか変えていきたいし、“ぱんだオリジナル”を熟成させて『何か凄いことをやっている』と話題になれば、クラシック・ファンの興味も湧いてくるのではないでしょうか」(上野)
吹奏楽愛好家以外も、ぜひご注目あれ!
取材・文:柴田克彦
(ぶらあぼ 2017年5月号から)
ぱんだウインドオーケストラ with ジョナサン・ヘイワード
5/13(土)14:00 東京文化会館
問:コンサートイマジン03-3235-3777
http://www.pandawindorchestra.com/