豪華歌手陣が繰り広げる真剣勝負!
日本を代表するオペラ歌手が一堂につどい、男女に分かれて得意の歌を披露する〜そんなコンサートといえば、NHKが主催する『ニューイヤーオペラコンサート』が有名だ。“オペラの紅白”とも呼ばれるが、元祖『紅白歌合戦』との最大の相違点は、勝ち負けがつかないことだろう。
きちんと勝敗がつく、オペラ版『紅白歌合戦』を開催し、それを通じて、オペラの魅力をもっと多くのひとに知らせたい。主催者のそんな思いが形になったのが、9月に開催される『第1回 オペラ歌手 紅白対抗歌合戦』である。第一線で活躍するオペラ歌手が集結し、得意の歌を披露するのは『ニューイヤー』と同じだが、こちらは文字通り「紅組」と「白組」が、勝ち負けを賭けた真剣勝負に臨むのだ。
出演者の顔ぶれはなんとも豪華。紅組は砂川涼子、腰越満美、澤畑恵美、佐藤美枝子、半田美和子ら、人気と実力を兼ね備えたプリマが顔を揃え、白組は「ソプラニスタ」として話題の岡本知高から、スターテノールの村上敏明、水口聡、樋口達哉、花形バリトン黒田博、そして個性派のカウンターテナー彌勒忠史(四重唱・La Dillのメンバーとして出演)まで、こちらも大活躍中の歌手ばかり。紅組と白組で、東京シティ・フィルを振る指揮者も女性(三ツ橋敬子)と男性(垣内悠希)に分かれるという徹底ぶりである。
なんとも華やかな一夜になりそうだが、それに加えてこのコンサートでは、なんと当日の聴衆が審査員を務めるという。審査に参加できるとなれば、聴き手の舞台への集中力も高まるし、歌手も真剣勝負せざるをえない。聴衆と舞台との一体感も生まれるだろうし、お祭り気分も高まりそうだ。
プログラムも、ヴェルディ、プッチーニの定番から、ベッリーニ、バーンスタインまで幅広い。ソプラニスタ岡本が《蝶々夫人》の名アリア〈ある晴れた日に〉を歌うのも面白そう。重唱が入っているのもポイントだが、とりわけヘンデルの《リナルド》の名アリア〈私を泣かせてください〉や、レハールの《メリー・ウィドウ》第2幕フィナーレを、それぞれ四重唱に編曲した版で聴けるというのも楽しみだ。
主催者はこの企画を、「クラシック音楽界の年間の恒例行事として定着させたい」と意欲満々。記念すべき第1回の聴衆、そして審査員になってみてはいかがだろう。
文:加藤浩子
(ぶらあぼ 2016年9月号から)
2016.9/6(火)18:30 サントリーホール
http://www.operaconcert.net