華麗なサウンドで新時代の幕開けを告げる
選曲も興味深い。「ツァラトゥストラはかく語りき」といえば、「日の出」と呼ばれる冒頭部分がなんといっても有名だ。まさに新たな時代の幕開けにふさわしい選曲といってよいだろう。一方、「英雄の生涯」は作曲者の自伝的交響詩。作曲時にシュトラウスがまだ30代前半だったことを考えるとずいぶん気の早い自伝だが、交響詩の作曲家としてはこの作品で頂点が築かれている。輝かしいヒーローの物語が、これからの新日本フィルで紡がれていくのだという予感を抱かせる。
「英雄の生涯」の聴きどころのひとつは、コンサートマスターによる長大で技巧的なヴァイオリン・ソロ。「英雄の伴侶」を意味するこの大ソロを崔文洙(チェ・ムンス)が奏でる。マエストロとの厚い信頼関係が伝わってくるのではないか。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ 2016年9月号から)
第561回 ジェイド〈サントリーホール・シリーズ〉
9/9(金)19:00 サントリーホール
横浜みなとみらいホール 特別演奏会
9/11(日)14:00 横浜みなとみらいホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815
http://www.njp.or.jp