室内楽からオペラまで、今年も多彩なプログラムが魅力
毎年4月末から5月にかけて開催される宮崎国際音楽祭が、第21回を迎える。今年もメインプログラムやスペシャルプログラムなど、多彩な公演に国内外の豪華アーティストが出演する。
今年最初のメインプログラムは「エクスペリメンタル・コンサート『ブダペストの新風』」と題し、音楽監督の徳永二男(ヴァイオリン)、野平一郎(ピアノ)らが下川愛帆(ダンス)と共演して音楽と舞踊の融合を示す。バルトーク以降のハンガリーの現代音楽が組まれ、エトヴェシュ、リゲティという作曲家の作品が取り上げられる(5/1)。
メインプログラム「演奏会3」は、同音楽祭の主要メンバーであるピンカス・ズーカーマン(ヴァイオリン)が、若手の三浦文彰(ヴァイオリン)、川崎雅夫(ヴィオラ)、アマンダ・フォーサイス(チェロ)、三界秀実(クラリネット)らと組んで、モーツァルトの傑作と称されるクラリネット五重奏曲他を演奏し、室内楽の醍醐味を披露する(5/13)。
ズーカーマン指揮による宮崎国際音楽祭管弦楽団は、ドヴォルザークの交響曲第8番を予定(演奏会4、5/14)。この日はズーカーマンとフォーサイスがソリストを務める、ブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番とハーバートのチェロ協奏曲も組まれた重量級のプログラムとなっている。
今年のオペラ公演は人気の高いプッチーニの《トスカ》(全曲・字幕付/演奏会形式)(演奏会5、5/15)。シューイン・リー(ソプラノ)、福井敬(テノール)らを迎え、県合唱連盟有志で構成された150名を超える合唱団が出演する。指揮は広上淳一。劇的で壮大なドラマが期待できそう。
スペシャルプログラムでは、ウラディーミル・アシュケナージが息子のヴォフカと組み、ピアノ・デュオを奏でる公演が話題となっている(5/5)。この他、徳永二男による「魅惑のタンゴ」もあり(5/2)、パヴェル・ヴェルニコフ(ヴァイオリン)、古川展生(チェロ)、菊池洋子(ピアノ)のヴェルニコフ・トリオが奏する「ウィーンの風にのせて」にも注目したい(5/9)。
今年もっとも興味深いのは、新シリーズ「Oh! My! クラシック」(4/30)だろう。このシリーズは今回から総監督を務める佐藤寿美のアイディアで、毎回、音楽以外の分野で活躍をしているクラシック好きが登場。第1回目は元首相の小泉純一郎氏を迎える。クラシック音楽に精通し、朝起きたときから夜寝るまでクラシックを聴き続けているという、小泉氏の音楽談義で進めるトーク・コンサート。彼はロンドン大学留学時代にイギリス国歌をパガニーニが編曲したヴァイオリンの無伴奏作品に触れ、大きな感動を得たそうで、今回はそれを徳永二男が演奏する。小泉氏は中学・高校時代にヴァイオリンを習っていて、最初に弾いた曲はJ.S.バッハの協奏曲第2番だったという。
宮崎国際音楽祭は、ふだんクラシック音楽をあまり聴く機会のない人や学生や子どもたちに向けてのコンサートも多く、「気軽にクラシック」という500円のコンサート、特設ステージでのストリート演奏会なども組まれている。加えて教育プログラム、関連コンサート・イベントも充実、宮崎市のみならず延岡市、都城市などでも演奏が行われる。17日間にわたって音楽三昧の日々が送れそうだ。
文:伊熊よし子
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年5月号から)
4/29(金・祝)〜5/15(日)
メディキット県民文化センター(宮崎県立芸術劇場)
延岡総合文化センター、都城市総合文化ホール 他
問:宮崎国際音楽祭事務局0985-28-3208
http://www.miyazaki-ac.jp/mf