華麗なタクトで響くブラームスの傑作
卓越したバトン・テクニックの持ち主として、まっさきに思い出されるのが秋山和慶。指揮姿を見ているだけでも音楽が雄弁に伝わってくるような名匠である。2014年に指揮生活50周年を迎え、ますます旺盛な指揮活動がくりひろげられているが、この2月には東京シティ・フィル定期演奏会の指揮台に登場する。
プログラムは、江口玲をソリストに迎えたブラームスのピアノ協奏曲第2番と交響曲第3番。ともにブラームス最盛期の傑作といってもよいだろう。1881年、避暑地プレスバウムでの夏の休暇に完成されたピアノ協奏曲第2番と、その2年後である83年にヴィースバーデンでの夏の休暇に書かれた交響曲第3番。両者には作曲時期の近さだけではなく、のびやかな抒情性や開放感、清冽なロマンティシズムといった共通する性格も見てとれる。
一方、ふたつの作品で対照的なのはサイズ。ピアノ協奏曲第2番は協奏曲としては異例の長大さを持ち、4楽章構成を持つことからしばしば「ピアノ付きの交響曲」とも形容される。ピアニストにとってはタフな協奏曲である。国際的な活躍を続ける実力者江口玲のこと、説得力のあるソロを聴かせてくれるはず。逆に交響曲第3番はブラームスの4曲の交響曲のなかではもっとも演奏時間が短い。曲を静かに余韻を残して閉じるという点も特徴的で、プログラムの前後半のコントラストも興味深い。
マエストロの華麗な棒のもと、ブラームスの傑作2曲の魅力が十全に伝えられることだろう。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年2月号から)
2/19(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002
http://www.cityphil.jp