INTERVIEW サー・サイモン・ラトル
渾身のプログラムを携え、バイエルン放送交響楽団と来日

© BR-Astrid Ackermann

Sir Simon Rattle
バイエルン放送交響楽団 首席指揮者

どんな音楽に対しても、
共に旅をしようとする意欲を持っているオーケストラです
 

 絶好調のサー・サイモン・ラトルとバイエルン放送交響楽団のコンビが、この11月に再び来日する。彼らの「いま」、そして意欲にあふれたツアーのプログラムについてラトルに聞いた。

─ラトルさんがバイエルン放送交響楽団の首席指揮者に就任されて3シーズン目を迎えています。このオーケストラの強みはどこにあるとお考えですか?

 世界中には素晴らしいオーケストラがたくさんありますが、「詩情」や「色彩感」を湛えたオーケストラとなると、そう多くはありません。これこそが、伝統的にバイエルン放送響が際立っている点です。彼らの内には、ドイツ人が「ヴァイヒ(柔らかい、まろやかな)」と呼ぶ感覚があり、ある種の繊細さ、そして互いの音に耳を傾け、その瞬間の音楽の中に身を置くというクオリティが、非常に稀有なレベルで備わっているのです。

 また、「自分たちにはこの演奏法しかない」などと決して言わないオーケストラです。どんな音楽に対しても、共に旅をしようとする意欲を持っています。初期バロックから最新の音楽まで、彼らは常に「あと一歩」まで踏み込むことを厭いません。

─今回の来日公演のプログラムは、とても魅力的かつ盛りだくさんです。マーラーの交響曲第2番「復活」やストラヴィンスキー「春の祭典」などのラトルさんお得意のレパートリーがある一方、ラフマニノフやドヴォルザークのあまり演奏されない曲も含まれていますね。

 バイエルン放送響が、どれほど幅広いレパートリーを持っているかを日本の皆さんにお見せしたいと心から思い、私たちはおそらく無謀ともいえる決断をしました。ツアー前の数ヵ月間に演奏したプログラムのほぼすべてを、今回日本で披露することにしたのです。

 その結果、あまり頻繁には演奏されませんが、傑作であるラフマニノフの交響曲第3番やドヴォルザークの「スケルツォ・カプリチオーソ」といった作品もラインナップに入っています。私が多感な時期を過ごした1960〜70年代、コンサートでは今のような超大作の交響曲ばかりが演奏されていたわけではなく、序曲と協奏曲の間にもう一曲入ることがよくありました。「スケルツォ・カプリチオーソ」は、まさにそうした場所で演奏される曲でした。幕開けとしても、感動的なフィナーレとしても素晴らしい役割を果たすこの作品は、間違いなくドヴォルザークの最高傑作の一つです。

─メインの一つ、シューベルトの交響曲第8番「ザ・グレイト」は、ラトルさんが昔から得意とされている曲です。「偏愛」といっていいほどこの曲に惚れ込んでいる理由は何でしょうか。

 シューベルトは私にとって常に大きな意味を持つ作曲家でした。特に惹きつけられてきたのは後期の音楽です。晩年のピアノ・ソナタ、そして弦楽四重奏曲第15番ト長調には格別の思いがあります。

 シューベルトの音楽はその後に続くあらゆる音楽へと繋がっています。特にト長調の弦楽四重奏曲を聴けば、そこにはすでにブルックナーのすべてが詰まっていますし、(未完の)交響曲第10番の緩徐楽章はマーラーへと通じています。彼は、19世紀という時代の残りの歳月に広がる「信じられないほど豊かな庭園」の種を蒔いた人なのです。

 そしてもちろん、「ザ・グレイト」は、あらゆる既成の枠組みを突き破る作品で、尽きることのない魅力を放っています。光と影がこれほどまでに混ざり合い、一つの器に収めておくことが不可能に思えるほどです。

─プログラムでは、武満徹の「鳥は星形の庭に降りる」にも目を引きました。ラトルさんは作曲家本人と深い親交をお持ちでした。今年は武満の没後30年にあたります。

 私は武満さんのことを心から敬愛していました。私にとって「日本」といえば、真っ先に彼のことが思い浮かぶほど、日本と彼は分かちがたく結びついています。近年、武満作品があまり演奏されなくなっているのは、私にとって非常に悲しいことです。彼は今でも、現代における最も重要な作曲家の一人であり、その音楽はどれほど複雑で個性的であっても、オーケストラや聴衆にダイレクトに伝わる力を持っています。記念の年に、この偉大な作品を再び日本に届けることができるのをとても幸せに感じます。

取材・文:中村真人
(ぶらあぼ2026年9月号より)

富士電機スーパーコンサート
サー・サイモン・ラトル指揮 バイエルン放送交響楽団
出演/クリスチャン・ツィメルマン(ピアノ)★ イザベル・ファウスト(ヴァイオリン)♦

2026.11/25(水)19:00 サントリーホール(完売)
曲目/武満徹:鳥は星形の庭に降りる
   ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番★
   ストラヴィンスキー:春の祭典

2026.11/26(木)19:00 サントリーホール
曲目/ドヴォルザーク:スケルツォ・カプリチオーソ
   ベルク:ヴァイオリン協奏曲♦
   シューベルト:交響曲第8番「ザ・グレイト」

2026.11/27(金)19:00 サントリーホール(完売)
曲目/武満徹:鳥は星形の庭に降りる
   ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番★
   ラフマニノフ:交響曲第3番

問:ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 
https://www.japanarts.co.jp

他公演 
2026.11/21(土) 兵庫県立芸術文化センター★(完売)
2026.11/22(日) ミューザ川崎シンフォニーホール♦(044-520-0200)
2026.11/24(火) 東京芸術劇場 コンサートホール(完売)
※公演によりソリスト、プログラムは異なります。詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。