世界を駆けるトップランナーが大阪・箕面に降臨! 挾間美帆&デンマークラジオ・ビッグバンドが描く刺激的なステージ

クラシック・ファンも必聴、最前線で輝く音楽がここに!

 ニューヨークを拠点に作曲家・指揮者としてジャズの世界で第一線をひた走っているのが挾間美帆である。近年は日本以外でも管弦楽曲を書いたり振ったりもしているが、とりわけ高く評価されているのは(ビッグバンドを含む)ラージアンサンブルの領域だ。第68回(2026年)のグラミー賞で2度目のノミネートを果たしたのは、彼女が首席指揮者を務めるデンマークラジオ・ビッグバンド(DRBB)のために書き下ろした楽曲だった。そのDRBBが4年ぶりに挾間と日本へ帰ってくる。

左:挾間美帆 ©Dave Stapleton 右:デンマークラジオ・ビッグバンド ©Emilia Therese

 全国7都市を巡るツアーの幕開けとなるのが、11月14日の東京建物 Brillia HALL 箕面(箕⾯市⽴⽂化芸能劇場)で開催される大阪公演だ。箕面市メイプル文化財団の「身近なホールのクラシック」シリーズの一環として開催される。挾間の色彩的なサウンドは、レスピーギやラヴェルといった20世紀前半のクラシック音楽が起源になっており、クラシックのファンにも自信をもって薦めたい公演なのだ。

 1964年に創設されたDRBBは、サド・ジョーンズ、ボブ・ブルックマイヤー、ジム・マクニーリーら、ビッグバンドの歴史を更新してきた偉大な作編曲家たちが音楽監督を務めてきた北欧の名門である。挾間は「m_unit」という弦楽四重奏を編成に含んだラージアンサンブルを自らが主宰しているが、そちらでは自分がやりたいことを追求しているのに対し、2019年に首席指揮者に就任したDRBBではスタンスが違う。

 彼らの長い歴史を尊重しながら、奏者が安心して音を委ねられる場を作ること。その安心を足場にして、彼ら自身もまだ思い描いていなかった表現へと導くこと。挾間にとってDRBBは、そんな挑戦を一緒に引き受けてくれる共同体なのだ。DRBBとの関係を表す言葉は「統率」というよりも、「信頼」や「無条件の愛」に近い。2017年の初共演からリハーサルやツアーを共にして分かち合った時間の蓄積ゆえなのである。

最新アルバム『Frames』レコーディング時より。
挾間と彼女を囲むDRBBのメンバーの表情から、その関係性の深まりが窺える。
©Christian Larsen

 来日公演では、2026年4月発表の最新アルバム『Frames』の楽曲が披露される。DRBB創設60周年の委嘱を起点に、挾間が歴代7人の音楽監督の語法を研究し、それを自らの作曲言語へと消化して生まれた作品集だ。タイトルの「フレーム」とは、先人の音楽を額縁に見立て、その内側に現在のDRBBと新しい絵を描くという発想なのだという。伝統を再現するのでも、過去と決別するのでもない。受け継いだものを素材にして未来の響きを立ち上げる、いわゆる「歴女」としての顔も持つ挾間らしい歴史との向き合い方が凝縮されている。

 『Frames』の冒頭を飾る「And the Door Unsealed(直訳すれば「そして扉は開かれた」)」は、それまで挾間自身の語法の中になかった、歴代監督たちのメロディやハーモニーの作り方を取り入れた楽曲。まさにDRBBとの深い関係にならなければ誕生しなかった音楽だ。アルバムの最後に鎮座する「The First Notes」は1986〜95年にかけて音楽監督を務めたピアニストのオーレ・コック・ハンセンから着想を得て、ピアノ的なフレーズが編成全体に拡大。ビッグバンドらしからぬ新たなサウンドを生み出すユニークな楽曲だ。そこに挾間の師であり、先代の監督でもあるジム・マクニーリーが編曲した「シング・シング・シング」(原曲はもちろん、ベニー・グッドマンの演奏で有名なあの曲だ!)のような挾間以外の楽曲も絡められていく。このように先人の楽曲と、そこから生まれた挾間の新作を並べて聴けるのが、今回のプログラムの面白さだ。

 精緻なスコアが、楽団特有の色彩や呼吸を得て初めて完成するのが挾間の音楽である。録音で構造を味わうのもよいが、奏者同士が瞬時に反応し、指揮台から送られる合図によって大編成の響きがしなやかに方向を変える、その瞬間の熱まで受け取れるのはライブだけ。名門の過去と未来、そして挾間美帆の現在地を一望できる絶好の機会になるに違いない。

文:小室敬幸


「身近なホールのクラシック」

挾間美帆指揮 デンマークラジオ・ビッグバンド
2026.11/14(土)16:00 東京建物 Brillia HALL 箕面(文化芸能劇場)

出演
挾間美帆(指揮)、デンマークラジオ・ビッグバンド

プログラム
ジム・マクニーリー編「シング・シング・シング」
挾間美帆×DRBB 最新アルバム『Frames』から
 「And the Door Unsealed」
 「The First Notes」 ほか

問:箕面市メイプル文化財団072-721-2123
https://minoh-bunka.com

助成:一般財団法人地域創造

他公演
11/15(日)アクリエひめじ(姫路市文化国際交流財団079-289-1108)
11/17(火)iichiko総合文化センター iichikoグランシアタ(大分県芸術文化スポーツ振興財団097-533-4004)
11/18(水)すみだトリフォニーホール(03-5608-1212)
11/21(土)宇都宮市文化会館(うつのみや文化創造財団028-636-2121)
11/22(日)長岡市立劇場(長岡市芸術文化振興財団0258-29-7715)
11/23(月)所沢市民文化センターミューズ アークホール(04-2998-6500)


小室敬幸 Takayuki Komuro

1986年、茨城県出身。東京音楽大学で作曲を学んだ後、同大学院では音楽学を専攻。修了後は大学の助手と非常勤講師を経て、現在は音楽ライター。クラシック音楽、現代音楽、ジャズ、映画音楽を中心に演奏会やCDの曲目解説、雑誌やWEBメディアにインタビュー記事を執筆。また、現在進行形のジャズを紹介するMOOK『Jazz The New Chapter』にも寄稿している。共著に『聴かずぎらいのための吹奏楽入門』『ピアノへの旅』。