岡田奏(ピアノ)が師・上田晴子と誘う、ドビュッシーとラヴェルの世界

©Makoto Kamiya

 15歳で渡仏し、パリ国立高等音楽院で12年間にわたって研鑽を積んだ岡田奏が、恩師の上田晴子とHakuju Hallでデュオ・リサイタルを開く。プログラムはドビュッシーとラヴェルというフランスの二大作曲家の作品を中心に組まれている。

 「晴子先生と選曲を熟慮し、Hakuju Hallの響きが2台ピアノでどうなるのかと考え、オーケストラを想像する曲、ピアニスティックな曲の両面を織り交ぜました。ドビュッシーの『牧神の午後への前奏曲』は、原曲のイメージをピアノの音にどう反映させるかが重要となり、管楽器や弦楽器の発音やタイミングなど、こまやかなところへの意識も大切です。『白と黒で』は先生が他の方と取り上げて思い入れがあり、今回ぜひということになりました。私は初めての挑戦です。交響詩『海』は私がパリで時間をかけて学んだ作品で、自然の恐ろしさや豊かさ、美しさを表現したいと考えています。ドビュッシーは時間の流れを感じる作曲家で、演奏者に委ねる自由さと懐の深さを感じます。留学時代は、モネをはじめとする数多くの絵画を美術館に観に行き、セーヌ川のほとりを散策して、人々の生きる姿勢、土地の空気、フランス語の語感などから刺激を受けました。そのすべてが自分の演奏に生きています」

 後半はラヴェルの「ラ・ヴァルス」。

 「『ラ・ヴァルス』はソロで先生のレッスンを受けた作品で、ワルツのリズム、洗練された美質、また狂気など、ラヴェルの精密機器のような音楽が2台ピアノになることでどう変容するか、ふたりの掛け合いなども楽しみです」

 岡田が上田と出会ったのは9歳のとき。日本の講習会で何度かレッスンを受け、これまでと異なる、新たな視点での教えを聞き、大きな衝撃を受けた。以来、師事したいと願うようになり、義務教育を終えてから難関の試験を受け、パリ音楽院へ。

 「最初に伝えられたのは、耳を使って空間の音を聴くことでした。先生のレッスンはとてもこまやかできびしく、ほんのひとつの部分でも自分がきちんと耳を使って音を聴いていないと、すぐに指摘されました。楽譜を見るときにはバスの線やメロディだけでなく内声を考えること、(残響の)長い音を聴き続けることの大切さも教わりました。そのときに、ピアノはこんなにも楽しいものなのだと感じたのです。今回のリサイタルでは、作品を仕上げるまでの準備のきびしさと、それらが本番によってどう解放されるかを楽しみにしています」

取材・文:伊熊よし子

Hakuju サロン・コンサート vol.16
上田晴子&岡田 奏(以上ピアノ)
2026.7/22(水)19:00 Hakuju Hall
問:Hakuju Hall チケットセンター03-5478-8700
https://hakujuhall.jp


伊熊よし子 Yoshiko Ikuma

音楽ジャーナリスト、音楽評論家。東京音楽大学卒業。レコード会社、ピアノ専門誌「ショパン」編集長を経て、フリーに。クラシック音楽をより幅広い人々に聴いてほしいとの考えから、音楽専門誌だけでなく、新聞、一般誌、情報誌、WEBなどにも記事を執筆。インタビューの仕事も多く、多い年で74名のアーティストに話を聞いている。近著は「モーツァルトは生きるちから 藤田真央の世界」(ぶらあぼ×ヤマハ)。
http://yoshikoikuma.jp/