ソヒエフ×N響の2026年幕開けは、マーラー「悲劇的」と「火の鳥」で

左:トゥガン・ソヒエフ ©Marco Borggreve
右:上野通明 ©Seiji Okumiya

 1月のN響定期はトゥガン・ソヒエフの登場。ロシア出身の彼は、トゥールーズ・キャピトル国立管とボリショイ劇場の音楽監督を辞任後、ウィーン&ベルリン・フィル等の超一流楽団から引く手数多となった世界のトップ指揮者の一人だ。その凄さはカリスマ的な吸引力と生気に富んだ音楽作り。N響にも再三客演して生き生きと輝く快演を展開し、無類の活力を吹き込んでいる。

 今回特に注目されるのは、マーラーの交響曲第6番「悲劇的」によるAプロと、十八番のフランス&ロシアものが並ぶCプロ。4楽章交響曲としての凝縮度がマーラー作品中最上位の「悲劇的」では、多彩な音色や迫力、ハンマーの打撃等、管弦楽の醍醐味を存分に味わえる。ソヒエフは、両ポストを退任後、独墺の中核レパートリーに力を注いでいるので、その成果が楽しみだし、オペラで培った語り口の妙も生かされる。マラルメの詩に拠るドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」、ボードレールの詩に拠るデュティユーのチェロ協奏曲「遥かなる遠い国へ」、プーシキンの童話詩に拠るリムスキー=コルサコフの「サルタン皇帝の物語」、ロシアの民話に拠るストラヴィンスキーの「火の鳥」(1919年版)と物語ベースの作品を集めたCプロも興味津々。種々の色彩感を持った各曲でのソヒエフの造作に加えて、N響定期初出演となる上野通明のチェロ独奏にも熱視線が注がれる。上野は俊英世代屈指の名手だし、曲はロストロポーヴィチのために書かれた“清新な20世紀の快作”で、この難曲の生演奏に触れるのも貴重な体験。ここは両公演で刺激に満ちた音楽に浸りたい。

文:柴田克彦

(ぶらあぼ2025年12月号より)

トゥガン・ソヒエフ(指揮) NHK交響楽団
第2054回 定期公演 Aプログラム

2026.1/17(土)18:00、1/18(日)14:00 NHKホール
第2055回 定期公演 Cプログラム
2026.1/23(金)19:00、1/24(土)14:00 NHKホール
問:N響ガイド0570-02-9502 
https://www.nhkso.or.jp