文化の都ならではのアウトリーチ事業、リニューアル開館10周年・ロームシアター京都との共同プロジェクトも!
1956年4月、日本で唯一の自治体直営のオーケストラとして創立された京都市交響楽団が、来年70周年を迎える。同楽団は9月17日、アニバーサリーを記念した事業に関する記者発表を行い、常任指揮者の沖澤のどか、楽団長を務める京都市長 松井孝治らが登壇した。

©京都市交響楽団
70周年記念事業の目玉となるのが、沖澤が指揮する「プロコフィエフの陣~交響曲全曲演奏会」。ツィクルスで取り上げられることは珍しいプロコフィエフの7曲のシンフォニーを、1年の間に全3回の公演で番号順にすべて演奏するという、チャレンジングな企画だ(5/3,7/18,11/28)。ライブ録音のCD化も予定されているという。
沖澤「交響曲の全曲演奏を行う際、例えばベートーヴェンやブラームスだと、オーケストラが曲を知り尽くしていることもあり、『指揮者がどのような音楽作りを行うか』という点に目が向けられる傾向にありますが、プロコフィエフの場合は『作曲家そのもの』に焦点が当てられると思うのです。叙情性と軽妙さの対比や、オーケストレーションの妙などが魅力的ですが、加えて一種の“皮肉”を含む音楽性が、『言われたことの裏側を読み取り、面白さを見つける』文化を持つ京都のオーケストラと合う気がしています」

©京都市交響楽団
“文化の都”の地の利を活かした企画として注目されるのが、アウトリーチ事業「京(みやこ)の音楽会」。国の登録有形文化財となっている京都市役所(25.11/6)をはじめ、西陣織会館(25.11/16)、さらには京都国際マンガミュージアム(26.3/14)など、京都の「伝統文化」や「近現代文化」を代表する空間で、京響メンバーによるアンサンブル演奏を楽しめる。
沖澤「私自身も、この夏から地元の青森で『青い海と森の音楽祭』という、アウトリーチとコンサートを両軸としたフェスティバルを立ち上げました。保育園の子どもたちやお年寄りなど、普段コンサートホールになかなかお越しいただけない方に音楽をお届けしましたが、本当に肌が触れ合うぐらいの距離感で、直接的に反応をいただいたことは、自分の音楽人生の中でも特別な経験になりました。今回の事業も、市のオーケストラとして市民の皆さんに活動の成果を還元し、そして京響のことをもっと広く知っていただく機会にしたいと思います」

同年、リニューアル開館10周年を迎えるロームシアター京都との共同プロジェクトも2公演開催される。まずは8月、首席客演指揮者のヤン・ヴィレム・デ・フリーントによるオルフ「カルミナ・ブラーナ」。安井陽子(ソプラノ)、藤木大地(テノール[カウンターテナー])、大西宇宙(バリトン)ら日本を代表するソリスト、そして京都中から集結するコーラス隊(京響コーラス・京都市立芸術大学・京都市立京都堀川音楽高校・京都市少年合唱団)とともに、20世紀を代表する大作に挑む(8/23)。そして、12月4日には、同日没後50年の命日を迎えるブリテンの「春の交響曲」を、桂冠指揮者・大友直人が取り上げる。小林沙羅(ソプラノ)、金子美香(メゾソプラノ)、笛田博昭(テノール)ら同じく盤石の独唱陣に加え、本公演では楽団と共演を重ねるプロ合唱団である東京混声合唱団が登場。この他記念事業の枠内で、年間チケット会員などに向けた限定コンサート(4/29)、そして「70周年記念プレミアム」と銘打たれた定期演奏会での五嶋みどりとの共演(11/21)が予定されている。
会見では、沖澤が常任指揮者に就任した時から熱望していた京都コンサートホールでのフルリハーサルが、来年度、定期演奏会を中心に実現されることも明かされた。これは、大の“クラシックマニア”を自認し、楽団長として「音楽家が活動に集中できる環境の整備」を推進してきた松井市長の強い後押しがあってのことだという。70周年、そしてその未来を見据え、一丸となって意欲的な取り組みを深める京都市交響楽団から、目が離せない。

文:編集部
写真提供:京都市交響楽団
京都市交響楽団
https://www.kyoto-symphony.jp



