松井孝治(京響楽団長)×石塚邦雄(日本フィル理事長)
――日本のオーケストラの未来を見据え、共鳴する志
京都市交響楽団(常任指揮者:沖澤のどか)と日本フィルハーモニー交響楽団(首席指揮者:カーチュン・ウォン)が2026年、創立70周年を迎える。京響楽団長は元参院議員で京都市長の松井孝治氏。日本フィル理事長は三越伊勢丹ホールディングスの社長・会長を歴任した石塚邦雄氏。政治・行政と企業経営で敏腕を振るってきた2人が、日本屈指の伝統ある楽団の未来を語り合った。両氏が重視するのはワールドクラスの芸術性、人々に愛される社会性、持続可能な事業性の3つだ。

右:石塚邦雄(日本フィルハーモニー交響楽団 理事長)
松井氏はバーンスタインやカラヤン指揮の公演を体験したクラシックファン。石塚氏は中学時代からラジオやレコードで鑑賞を始めた音楽好き。それぞれ2024年と2025年に京響楽団長と日本フィル理事長に就任。26年はともに70周年記念事業に力を注ぐ。
松井「京響との出会いは地元・京都の小学校の学校鑑賞です。クラシック好きになる原体験でした。大学も就職(通商産業省)も東京でしたが、京都府選挙区から参院議員になったときに京響友の会に入りました。かつての京響の印象とは違って、とてもうまい日本有数のオーケストラだと思いました。アグレッシブで興味深い演奏をします。2023年に沖澤のどかさんが常任指揮者になってからは一段とレベルアップしています」
石塚「沖澤さんには12月に日本フィルの東京定期演奏会も指揮していただきます。レーガーの超難曲といわれるピアノ協奏曲を阪田知樹さんと演奏します。組み合わせられるブラームスの交響曲第2番も、沖澤さんのお人柄のイメージにぴったり合うレパートリーなので、今からとても楽しみです。70周年記念の開幕は4月、サントリーホールでの首席指揮者カーチュン・ウォンさんによるマーラー編曲のベートーヴェンの交響曲第9番です。あまりにも有名な『第九』ですが、マーラーを得意とするマエストロがこの作品の新しい魅力を引き出してくれることでしょう」

両楽団の70周年記念公演が目白押しだ。京響は5月3日と7月18日、11月28日に京都コンサートホールで開く沖澤指揮「プロコフィエフの陣〜交響曲全曲演奏会」、日本フィルではカーチュン指揮による6月21日と楽団創立記念日の6月22日のサントリーホールでのマーラーの交響曲第8番「千人の交響曲」も注目される。
松井「京響は『京響友の会』定期会員に支えられていますが、一方で70年の歴史がある市民のためのオーケストラであり、京響の原点は、一人でも多くの市民の方々にアウトリーチをしていくことです。子ども向け演奏会を開くほか、私が市長になってからは、ホールでのリハーサルをワンコイン500円で聴いてもらうなどして市民への開放度を高めています」
石塚「日本フィルは芸術性とともに、被災地公演をはじめ社会性も重視してきました。私は企業経営に携わってきましたから、持続可能なオーケストラ活動のため事業性も考えたいです。百貨店と同様、オーケストラ自体は無くならなくても、個々の楽団が生き残れるかは分かりません。マーケットインの発想も必要です」

京響は70周年記念アウトリーチ事業として、京都市内の歴史文化施設で楽団員が演奏する「京(みやこ)の音楽会」を複数回開く。日本フィルは楽団員のプロデュースによる「日本フィル室内楽シリーズ」を3月23日に東京の王子ホールで始動し、メンバー一人ひとりの魅力もクローズアップしていく。市民に愛され、未来の聴衆を育てる企画にも力を注ぐ。
松井「京響の自慢の一つは、本拠地の京都コンサートホールの駐輪場が自転車でいっぱいになることです。『自転車で通えるワールドクラスのオーケストラ』はコンパクトな京都の街ならではです。沖澤さんも指揮する『ZERO歳からのみんなのコンサート』をはじめ、子どもも大人も気楽に質の高い演奏を楽しめるオーケストラを目指します」
石塚「2026年で第52回を迎える恒例のファミリー向け『夏休みコンサート』は、各地で毎年17〜18公演行っていますが、人気も社会性も高く、事業性もあります。将来の楽団のあり方の一つとして今後も力を入れていきます」
伝統を育み、未来を志向する京響と日本フィル。今回の対談を機に2人は両楽団の連携を深めたい考えだ。
取材・文・構成:池上輝彦
写真:有田周平
(ぶらあぼ2026年3月号より)
◆京都市交響楽団 70周年記念事業 プロコフィエフの陣~交響曲全曲演奏会
【壱】2026.5/3(日・祝)
【弐】7/18(土)
【参】11/28(土)
各日14:30 京都コンサートホール
1回券 3/14(土)発売
問:京都市交響楽団075-222-0347
https://www.kyoto-symphony.jp
◆日本フィルハーモニー交響楽団 創立70周年記念特別演奏会 《千人の交響曲》
2026.6/21(日)17:00、6/22(月)19:00 サントリーホール
3/18(水)発売
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911
https://japanphil.or.jp

