
日本勢は藤野瞳子が第3位入賞
フルートに特化した世界的な登竜門として知られる神戸国際フルートコンクール(審査委員長:酒井秀明)の本選が9月6日、神戸文化ホールで行われ、イタリアのリカルド・チェラッキと、ドイツのファビアン・ヨハネス・エッガーが第1位に選ばれた。日本勢で唯一本選に進んだ藤野瞳子は、スロベニアのブリナ・ウヌクとともに第3位に入賞した。
第11回 神戸国際フルートコンクール 最終結果
第1位:リカルド・チェラッキ Riccardo CELLACCHI(イタリア)
第1位:ファビアン・ヨハネス・エッガー Fabian Johannes EGGER(ドイツ)
第3位:藤野瞳子 Tohko FUJINO(日本)
第3位:ブリナ・ウヌク Brina UNUK(スロベニア)
第4位:アンナ・コマロワ Anna KOMAROVA(ロシア)
第5位:フランツィスカ・アンネ・フンデリッチ Franziska Anne FUNDELIĆ(クロアチア/ドイツ)
特別賞:カルヴィン・メイマン Calvin MAYMAN( アメリカ )
4年に一度開催されるこのコンクールは、今年で創設40周年。これまでにベルリン・フィル首席奏者のエマニュエル・パユをはじめ、国際的に活躍する多くのフルート奏者を輩出してきた。今年は41の国と地域から357名が応募し、録音での予備審査を通過した39名が神戸に集い、8月29日から第1次審査が行われていた。審査員には、フランス国立管首席のシルヴィア・カレッドゥや、ミュンヘン・フィル、ケルン放送響の首席を歴任したミヒャエル・ファウストらが名を連ね、日本からは酒井委員長とN響首席奏者の神田寛明が参加した。
2回の予選を経て本選に進んだのは6名。モーツァルトの協奏曲(共演:神戸市室内管弦楽団 ※指揮者無し)と1985年以降に作曲された無伴奏作品という2曲の課題を披露した。
第1位に輝いたチェラッキは、ベルン交響楽団の首席奏者として活躍する25歳。コロナ禍のためオンライン審査で実施された2021年に続く挑戦だったが、結果発表後の記者会見では 「ライブで演奏できたことが大きな喜びでした。ファイナルに残れただけで満足でしたが、この結果は私のキャリアにおいても大きな一歩です」と受賞の重みをかみしめた。
エッガーは18歳の新鋭で、ミュンヘン音楽・演劇大学に在籍。「日本はヨーロッパ以外で初めて訪れた国。今回、同学のチェラッキと1位を分かち合えたことが何より嬉しいです」と声を弾ませた。


第3位に入賞した藤野瞳子は桐朋学園大学ソリスト・ディプロマコースに在学中。日本学生音楽コンクール第1位(2018)、日本木管コンクール第3位(2022)と国内で実績を重ねてきたが、今回、国際的な舞台で一層の存在感を示した。会見では「スタッフ、審査員、ピアニスト、オーケストラ、聴衆の皆さま、コンクールを支えてくださったすべての方に感謝したい」と謙虚に大会を振り返った。

酒井審査委員長は「皆さん技術的な完成度が高く、最終的には音楽表現の多彩さが評価を分けたと思う」と総括。運営委員長の神田は「40年の歴史の中で阪神淡路大震災やコロナ禍などの危機を乗り越えてきた。今回も350名を超える応募があり、神戸が“フルートの町”として世界に知られていることを実感した」と語った。
優勝者披露演奏会は2026年に神戸と東京で予定されている。また、コンクールを核とした「KOBE国際音楽祭」は9月14日まで市内各所で続き、神戸市混声合唱団の定期演奏会など多彩な公演が行われる。

文:編集部
写真提供:神戸市民文化振興財団
神戸国際フルートコンクール Kobe International Flute Competition
https://kobe-flute.jp


