東京春祭とベルリン・フィルが、ハイレゾ音源によるライブ・ストリーミング配信

 IIJ、KORG、Saidera Paradiso、ソニーの4社が東京・春・音楽祭とベルリン・フィルの演奏会で、デジタル・オーディオ・フォーマット「Direct Stream Digital(以下DSD)5.6MHz」ハイレゾ音源のライブストリーミング配信の公開実験を行った。

 DSD5.6MHzは、アナログの音源をデジタルに変換する際の変換方式の一種。ハイレゾ音源配信のフォーマットとして普及しつつあるが、CDの128倍にも及ぶサンプリング周波数と、そのデータ量の多さから、インターネットを利用した配信には困難が伴う。そのため、今回の実験は、技術的に世界でも初となる画期的な試み。実験では、KORGがライブ音源のエンコードを、KORGとソニーでDSD信号処理を行い、IIJがストリーミング用のプラットフォームとネットワークを提供した。

配信概要図
配信概要図

 実験の第1弾は、去る4月5日(日)東京文化会館小ホールで開催された「東京春祭マラソン・コンサート vol.5 《古典派》〜楽都ウィーンの音楽家たち」。約9時間にわたりライブ配信したほか、12日(日)までオンデマンド配信した。
 続く4月12日(日) には第2弾として、ベルリンのフィルハーモニー・ホールで行われたサー・サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルの演奏会をライブ配信した。こちらもオンデマンド配信されており、19日(日) 24:00(日本標準時)まで試聴可能だ。なお、試聴にはPCと専用ソフトウェア(無償)、対応DACが必要となる。ソフトウェアは、DSD Live Streaming特設サイト( http://dsd.st/ )からダウンロードする。

 ぶらあぼ編集部では、上記実験のうちベルリン・フィルの演奏会のライブ配信をリアルタイムで、後日、東京春祭のオンデマンド配信を試聴してみた。

会場のベルリン・フィルハーモニー・ホール
会場のベルリン・フィルハーモニー・ホール

ベルリン・フィルハーモニー・ホール内観
ベルリン・フィルハーモニー・ホール内観

使用機材と環境は以下の通り。
●PC:MacBook Pro (Retina, 15-inch, Late 2013) 、MacOS 10.9.5
●DAC:KORG DS-DAC-100
●インターネット接続回線:フレッツ 光ネクスト ギガマンション・スマートタイプ
試聴に使用したMacBook Pro (Retina, 15-inch, Late 2013) とKORG DS-DAC-100
試聴に使用したMacBook Pro (Retina, 15-inch, Late 2013) とKORG DS-DAC-100

 まず、対応DACのKORG DS-DAC-100を用意、KORGのサイトからMac OS版ドライバDS-DAC Driver v1.0.7 (β) をダウンロード、インストール、USBケーブルでMacとDACを接続、セットアップする。
試聴に使用したKORG DS-DAC-100 
試聴に使用したKORG DS-DAC-100 

DACをパソコンに認識させるためのドライバーをダウンロード、インストール
DACをパソコンに認識させるためのドライバーをダウンロード、インストール

 次に、DSD LIVE Streamingの特設サイトから専用ソフトウェア「PrimeSeat」をダウンロード、インストールする。

公開実験を受信するための専用ソフトウェア「PrimeSeat」をダウンロード
公開実験を受信するための専用ソフトウェア「PrimeSeat」をダウンロード

 PrimeSeatを起動すると、配信案内と接続方法などの案内が表示される。
PrimeSeatを起動したところ
PrimeSeatを起動したところ
 右上にある▽をクリックするとコンテンツの一覧が表示される。このなかから、[live]5,6MHzを選択し試聴した。
ライブ配信のほか、オンデマンド、サンプル音源などが並ぶ
ライブ配信のほか、オンデマンド、サンプル音源などが並ぶ
ライブ配信を受信しているところ
ライブ配信を受信しているところ

 同時刻には、ベルリン・フィルがすでに行っている映像配信サービス「デジタル・コンサートホール(DCH)」でも動画配信されており、そちらとも比較してみたが、今回のDSD Live StreamingでのDSD5.6MHzハイレゾ・ライブ配信はDCHを上回る高音質であることがはっきりと確認できた。
DCH用のマイクと並んで、DSDストリーミング用のマイク(白円部。B&K(現DPA)の4006という無指向性のマイク)が設置された。
DCH用のマイクと並んで、DSDストリーミング用のマイク(白円部。B&K(現DPA)の4006という無指向性のマイク)が設置された。

現地からの配信には東京春祭と同様のシステムが使用された
現地からの配信には東京春祭と同様のシステムが使用された

 今回使用したインターネット接続回線が、現在一般家庭で望みうる最高品質に近いもの(DCHの回線テストで約86Mbit/s)であったとはいえ事前に心配していた、「回線の途中で音が途切れる」といった状況はまったく発生しなかった。
DCHの回線テストでおおよその回線速度を測定した
DCHの回線テストでおおよその回線速度を測定した

 今回の実験は、音声のみの配信だったため、動画配信されるDCHと比べると「目で見る」という迫力には欠けるものの、それを補って余りあるリアルな音体験が得られたという意味ではとても意義あるものだった。
ベルリン・フィルがすでに行っている動画配信サービスのDCH
ベルリン・フィルがすでに行っている動画配信サービスのDCH

 今後、対応DACが増え同時接続のユーザーが増えた場合、今回のように問題無く配信されるかは現時点では未知数だが、ハイレゾ音源の新たな展開に期待がかかる。

(DACおよび写真提供:株式会社コルグ)
 
※今回の実験における対象DACは以下の7機種。
・KORG DS-DAC-10 
・KORG DS-DAC-10-SV 
・KORG DS-DAC-100 
・KORG DS-DAC-100m
・ソニー USB DAC アンプ UDA-1 (Windowsのみ) 
・ソニー ポータブルヘッドホンアンプ PHA-2 (Windowsのみ)
・ソニー ポータブルヘッドホンアンプ PHA-3 (Windowsのみ)

■DSD Live Streaming概要
1.「東京春祭マラソン・コンサート vol.5 《古典派》〜楽都ウィーンの音楽家たち」
2015年4月5日(日曜日) 11:00〜20:00(日本時間)

2.「サー・サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィル演奏会」
2015年4月11日(土曜日) 19:00〜(ドイツ時間)
【曲目】 ベルリオーズ《ファウストの劫罰》>全曲
【管弦楽】 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
【指揮】 サー・サイモン・ラトル
【独唱】チャールズ・カストロノーヴォ(ファウスト)、ジョイス・ディドナート(マルグリート)リュドヴィク・テジエ(メフィストフェレス)、フローリアン・ベッシュ(ブランデル)
【合唱】 ベルリン放送合唱団(合唱指揮:サイモン・ハルシー)

ベルリン・フィルハーモニー・ホール(ドイツ・ベルリン)からのライブ・ストリーミング
配信日時
ドイツ時間 2015年4月11日(土) 19:00〜
日本時間 2015年4月12日(日) 2:00〜

■DSD Live Streaming

■KORG
■東京・春・音楽祭
■IIJ
■ソニー
■Saidera Paradiso