寺田悦子&渡邉規久雄による連弾シリーズ第4弾はブラームス「ハンガリー舞曲集」全21曲をメインに

左:寺田悦子 右:渡邉規久雄

 それぞれが卓越したソリストでありながら、デュオとしても充実した活動を続けている寺田悦子と渡邉規久雄。二人の連弾を楽しめるコンサートの第4回のテーマは「連弾音楽の系譜」。ブラームスの「ハンガリー舞曲集」全21曲を核に、モーツァルト、シューベルトの作品が並ぶ。

寺田「『ハンガリー舞曲集』全曲を演奏したいというところから今回のプログラムを決めていきました。第6番までは演奏されることが多いですし、私たちも実際に取り上げてきましたが、第7番以降は録音以外で聴ける機会は少ないですよね」

渡邉「当時流行していたハンガリーの音楽を取り入れ、その特徴を生かしつつブラームスならではの音楽も感じられる魅力的な曲集です。特に後半になるにつれてブラームスの独自性が強まっているので、その変化もお聴きいただきたいです」

寺田「また落ち着いたテンポの楽曲にはロマの音楽ならではの歌いまわしが聴ける箇所がありますが、それらは日本人の感性に訴えるものも多く、お客様にとっても新たな発見があるのではないかと思います」

 有名な第1、5、6番などは華やかで演奏効果も高いが、後半でも高度なテクニックが要求されるという。

寺田「ブラームスならではの重音奏法や速いパッセージなど、かなりピアニスティックに書かれている楽曲もあります。手が交差する箇所も多く、連弾曲としての難易度も非常に高いです。取り組むほどに新たな楽しさを感じられます」

渡邉「全曲を通してプリモとセコンドそれぞれのパートの独立性が高く、アンサンブルとしての面白さがつまっています。オーケストラや室内楽を思わせる部分も非常に多く、音色の面でも多彩な世界をお楽しみいただけると思います」

 今回は「ハンガリー舞曲集」の魅力を再発見できることはもちろん、「連弾音楽の系譜」と題している通り、モーツァルトの「四手のためのソナタ」K.381にはじまり、シューベルトの「創作主題による8つの変奏曲」、そしてブラームス…と連弾音楽の歴史を辿るような内容になっている点も興味深い。

寺田「モーツァルトはユニゾンも多く、二人で一緒に演奏する楽しさを味わうことに重きが置かれており、シューベルトではそれがより進化し、技巧的にも難易度が上がっています。そしてブラームスではよりポリフォニックな面が増して…というように、連弾音楽の進化を耳でお楽しみいただけるように組みました」

 連弾音楽の歴史を追いつつ、ブラームスの「ハンガリー舞曲集」の知られざる魅力にも出会うことができる、貴重な機会となりそうだ。
取材・文:長井進之介
(ぶらあぼ2024年11月号より)

寺田悦子 & 渡邉規久雄 デュオ・ピアノ 四手連弾の宇宙Ⅳ 「連弾音楽の系譜」
2024.11/21(木)19:00 紀尾井ホール
問:ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212
https://www.japanarts.co.jp

他公演
11/7(木) 盛岡市民文化ホール(小)(マリオスインフォメーション019-621-5002)