【SACD】チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」 /大友直人&東響

 現在の好調に至るまでの東京交響楽団を支え続けた大友直人が、35年にわたり同楽団と演奏を重ねてきた「悲愴」はなんと16回目。1989年といえばカラヤンの没年。この間に多様な演奏の流行が生まれる中、ぶれずに正攻法を貫いてきた大友の面目躍如たる、まさにオーソドックス、「これぞ悲愴」という過不足のない構築。外連味とは無縁、安心して浸れる流れを作りながら、いつの間にか深淵を覗くような響きを生み出す。その深い懐こそ、あらゆる表現が可能になった東響の進化、そして揺るぎない名匠となった大友の深化の表れ。「オーソドックス」であり続けることの重みをも伝える。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2024年11月号より)

【information】
SACD『チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」 /大友直人&東響』

チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」

大友直人(指揮)
東京交響楽団

収録:2023年9月、ミューザ川崎シンフォニーホール(ライブ)
オクタヴィア・レコード
OVCL-00847 ¥3850(税込)