2025年1月、いよいよ佐渡裕が新日本フィルとともにマーラーの交響曲第9番に挑む。23年4月より新日本フィル第5代音楽監督に就任した佐渡が、レパートリーの中核に置いてきたのが「ウィーン・ライン」。ハイドン、ベートーヴェン、ブルックナー、リヒャルト・シュトラウス、マーラーら、ウィーンの音楽を積極的にとりあげてきた。欧州の拠点を同地に置き、オーストリアのトーンキュンストラー管弦楽団音楽監督を務める佐渡が、新日本フィルとの新時代をウィーンの音楽で彩ることは、もっともなこと。オーケストラと共演を重ね、相互理解を深めた今が、マーラーの交響曲第9番に取り組むにふさわしいタイミングなのだろう。
マーラーの交響曲はどの作品であれ、演奏者への要求水準は高いものであるが、やはり第9番は特別な作品だ。単にマーラーが最後に完成させた交響曲というだけではなく、作品内容でもドイツ・オーストリアの交響曲の系譜における終着点のような趣がある。透徹した美意識で貫かれ、作品は大きなドラマを描くが、最後に訪れるのは虚無のようにも思えるし、安らぎのようにも思える。多義的な解釈の余地があるという点でも、指揮者によるアプローチに注目が集まる。
さらに、この曲は佐渡の師バーンスタインの十八番であったことを思い出す。バーンスタインはこの曲で伝説を作った。師への思いを込めた記念碑的な名演を期待せずにはいられない。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2024年10月号より)
第660回 定期演奏会
〈トリフォニーホール・シリーズ〉
2025.1/25(土)14:00 すみだトリフォニーホール
〈サントリーホール・シリーズ〉
2025.1/26(日)14:00 サントリーホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815
https://www.njp.or.jp