2025年2月の海外公演情報

Wiener Staatsoper Photo by Dimitry Anikin on Unsplash

『ぶらあぼ』誌面でご好評いただいている海外公演情報を「ぶらあぼONLINE」でもご紹介します。
[以下、ぶらあぼ2024年11月号海外公演情報ページ掲載の情報です]

曽雌裕一 編

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 今年も、毎年恒例の独OPERNWELT誌の年間最優秀賞(2022/23シーズン)が発表になっている。主要な受賞は、オペラハウスがまたもやフランクフルト歌劇場、女声歌手がアスミク・グリゴリアン、演出家がリディア・シュタイアーといったところだが、同誌のホームページでは全体の一部分しか閲覧できないので、本誌入手後の来月の本欄でさらに補足したい。

 なお、最初にお断りだが、今月の本文中に「メトロポリタン歌劇場」の掲載がないのは、もともと2月にオペラ公演がないためで、ミスによる欠落ではない。ご了解のほどお願いしたい。

 さて、例年2月は現代音楽関係のコンサート、オペラが目立つ。例えば、フランス国立管やフランス国立放送フィルが参加する「フェスティバル・プレザンス2025」とか、SWR響の参加する「ECLAT現代音楽フェスティバル」。もちろん、2月に限らないケルンWDR響の「ムジーク・デア・ツァイト」などの通常企画もある。

 その観点でオペラを眺めると、英国ロイヤル・オペラで世界初演される、マーク=アンソニー・ターネジ作曲の「フェステン」がまずは注目の現代作品。彼はこの作品について「ぶらあぼ」のインタビューで、「来年(2025年)、ロイヤル・オペラで新しいオペラを発表するが、それはデンマークの映画『セレブレーション』(原題:Festen)に基づいたもので、児童虐待や人種差別という重たいテーマを扱ったオペラ」であることを公表していた。

 もう一つ、現代オペラというわけではないが、2月には過酷な歴史を背負ったオペラがフランクフルト歌劇場で上演される。作品はフランス人作曲家マニャールによる「ゲルクール」。マニャールの住居は第1次世界大戦の際にドイツ兵により火を放たれ、マニャール自身もそのために焼死してしまう。しかも、この作品の譜面の一部も同時に焼失してしまうという悲劇の連鎖に見舞われる。だが驚いたことに、後年、ジョゼフ=ギィ・ロパルツという作曲家が、消失した部分を何と自分が聴いた記憶から再構成して、1931年に再上演にこぎ着ける。全く驚くべきエピソードだ。

 さて、こうした特別なオペラ以外にも、2月には、R.シュトラウス「ダナエの愛」(バイエルン州立歌劇場)、ワーグナー「ワルキューレ」(ミラノ・スカラ座。ティーレマンが降板した後の指揮者は原稿執筆時点で未定)、ファリャ「はかない人生」(テアトロ・レアル)、ヘンデル「オルランド」(パリ・シャトレ座)、ヘンデル「セメレ」(シャンゼリゼ劇場)、リュリ「ペルセ」(同)などの注目公演がある。また、今シーズンでハンブルク州立歌劇場の音楽監督を退任するケント・ナガノの同劇場でのオペラ公演もできるだけ聴いておきたい。2月はR.シュトラウス「ナクソス島のアリアドネ」、オッフェンバック「ホフマン物語」が上演される。古楽系では、ベルリン古楽アカデミーが演奏を担当するテラデーリャスの「メローペ」という珍しい作品も要注目。

 ところで、冒頭に紹介したアスミク・グリゴリアンが2月に登場するのはアン・デア・ウィーン劇場でのベッリーニ「ノルマ」。同じ作品がウィーン国立歌劇場でも上演されるが、こちらは、フローレスの出来次第だろうか。なお、あまり話題にならないが、ベルリン・ドイツ・オペラのR.シュトラウス「影のない女」でバラクの妻を歌うキャサリン・フォスターも、今絶好調のベテラン・ソプラノだ。

 オーケストラでは、セクハラ疑惑で苦境に陥っている指揮者のロトが、果たしてベルリン・フィルとバイエルン放送響に予定通り出演できるかどうかが個人的には大注目。復活が叶うなら、是非どちらかのオケで聴いてみたい。大御所ムーティの振るウィーン・フィル、ラトルの振るバイエルン放送響、サヴァールの振るル・コンセール・デ・ナシオン(ウィーンのコンツェルトハウス)などは定番の注目公演。最近、ベートーヴェンの交響曲をリストによるピアノ編曲版でよく取り上げるレヴィットのピアノも要注目だ(ケルンのフィルハーモニー、フランクフルトのアルテオーパーなど)。

(曽雌裕一・そしひろかず)
(コメントできなかった注目公演も多いので本文の◎印をご参照下さい)