音楽の都伝統のサウンドを追い求めて
昨年、新日本フィル音楽監督に就任した佐渡裕は、「ウィーン・ライン」を柱に掲げ、オーケストラの土台を築くウィーンゆかりの作曲家を積極的に取り上げている。9月の定期では、昨年に続きハイドンの交響曲と生誕200年を迎えるブルックナーの交響曲を指揮する。
佐渡の新日本フィル・デビューは、1988年カザルスホールでのハイドン交響曲全曲演奏会シリーズ第3回で、第7番「昼」・第8番「晩」・第9番を指揮した。即ち、今回の第6番「朝」で三部作が完成することになる。「朝」は当時流行っていた、交響曲と協奏曲の中間にあたるコンチェルトーネのような性格をもち、ソロ楽器が活躍する楽しい作品。佐渡はトーンキュンストラー管弦楽団とCD録音も行っており、得意とする曲でもある。
交響曲第7番はブルックナーの特長である対位法と旋律美が絶妙にブレンドされた交響曲の金字塔。初演から大成功を収め、ブルックナーの名を世に知らしめた。佐渡は今年2月にウィーン楽友協会大ホールでのトーンキュンストラー管の定期でも取り上げ、録音もされた。準備万端で今回の演奏会に臨むことになる。昨年新日本フィルを指揮した交響曲第4番「ロマンティック」は、オーケストラの重量感と厚みのある豊かな拡がりを持った音が批評家から絶賛された。
佐渡がムジークフェラインの優れた音響の中でトーンキュンストラー管と10年にわたり演奏を重ね会得したウィーン伝統の音は、新日本フィルとのコンサートにも生かされ、豊潤な響きとなって花開くことだろう。
文:長谷川京介
(ぶらあぼ2024年8月号より)
第658回 定期演奏会
〈トリフォニーホール・シリーズ〉
2024.9/21(土)14:00 すみだトリフォニーホール
〈サントリーホール・シリーズ〉
9/22(日)14:00 サントリーホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815
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