バラエティ豊かなプログラムでおくる2年ぶりのソロ
寺田悦子はウィーンとアメリカで研鑽を積んだピアニスト。国際的な活動も目覚ましく、常に日本のピアノ界を牽引し続けるひとりで、渡邉規久雄とのピアノデュオにも積極的に取り組み高い評価を得ている。
今回は「時空を超えて」と題し、4つの異なる時代を生きた作曲家の作品を集めたソロ・リサイタルを行う。若きベートーヴェンの意欲作であり、充実した構成と感情表現の豊かさが魅力的なピアノ・ソナタ第7番、ブラームスが新たな創作期に入り生み出した抒情性豊かなピアノ曲集(op.76)に加え、寺田と親交の深かった西村朗の作品に、ショパンの多彩な楽曲が並ぶ。いずれも作曲家が心身ともに充実した時期に書かれ、それぞれの魅力がわかりやすく聞こえてくるものである。聴く者の心を強く打つ4つの時代の作品が、寺田の精緻な技巧とニュアンスに富んだ表現に彩られることで、ピアノという楽器の魅力や可能性が改めて感じられることだろう。
文:長井進之介
(ぶらあぼ2024年5月号より)
2024.6/9(日)14:00 東京文化会館(小)
問:ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212
https://www.japanarts.co.jp