佐渡 裕(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団

メンデルスゾーンの筆致が冴える劇音楽を最高のキャストで

左より:佐渡 裕 ©Takashi Iijima/小林沙羅 ©NIPPON COLUMBIA/林 美智子 ©Toru Hiraiwa/ウエンツ瑛士

 新日本フィル音楽監督就任2年目、佐渡裕の新しいシーズンが始まる。佐渡は楽団の活動に加え、すみだ音楽大使として墨田区内中学校等の吹奏楽部やオーケストラの指導など、街とホール、オーケストラをつなぐ活動にも熱心に取り組んできた。新シーズンの定期演奏会は「音楽的対話をさらに追求」と強調する。ハイドン、ベートーヴェン、ブルックナー、マーラー等を指揮する予定で、4月定期は、ベートーヴェンの交響曲第2番とメンデルスゾーンの劇音楽「夏の夜の夢」を組み合わせた。

 シェイクスピアの同名の喜劇をもとに作られた「夏の夜の夢」は、メンデルスゾーンが17歳のときに序曲を書き、後年、それに続けて劇付随音楽として完成させた。いたずら好きの妖精パックが惚れ薬を垂らす相手を間違えたり、職人の頭をロバに変えたり、恋の大騒動や右往左往する人間の姿が、表情豊かに溌剌とした音楽で描かれる。トランペットが鳴り響く有名な「結婚行進曲」をはじめ、独唱のソプラノの小林沙羅とメゾソプラノの林美智子が、清冽な美しい声で音楽を華やかに彩る。千葉県の東葛地区で活動する連合合唱団「One Voiceちば」のフレッシュな歌声や、シェイクスピアゆかりの英国で俳優修業をした、妖精パック役のウエンツ瑛士の語りにも注目したい。

 まさにサントリーホール&トリフォニーホール両シリーズの開幕に相応しい祝祭的なプログラム。楽員とのコミュニケーションも深まりつつあるいま、佐渡の渾身のタクトで喜びに溢れる一体感の強い音楽が作り上げられるだろう。
文:柴辻純子
(ぶらあぼ2024年4月号より)

第655回 定期演奏会
〈サントリーホール・シリーズ〉 
2024.4/19(金)19:00 サントリーホール
〈トリフォニーホール・シリーズ〉
2024.4/20(土)14:00 すみだトリフォニーホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 
https://www.njp.or.jp