年末のスペシャルなステージは音楽監督のタクトで
師走の風物詩といえばベートーヴェン「第九」。12月も後半に入ればオーケストラのコンサートはほぼ「第九」一色になる。暮れになれば来し方に思いを馳せるという日本人の心情に、過去を振り返りながら未来への希望を歌う「第九」はぴたりと寄り添ってくれる作品なのだ。
年末の「第九」をだれが指揮するのか。楽団によっては若手の抜擢もあれば重鎮の起用もあるが、新日本フィルの答えは明快だ。オーケストラのシェフが「第九」を振る。昨年に続いて、今年も音楽監督の佐渡裕が指揮を務める。独唱陣はソプラノの高野百合絵、メゾソプラノの清水華澄、テノールの笛田博昭、バリトンの平野和。勢いのあるメンバーがそろった。栗友会合唱団とともに怒涛のクライマックスを築く。
佐渡が新日本フィルの第5代音楽監督に就任したのは今年4月のこと。オーストリアのトーンキュンストラー管弦楽団音楽監督を務め、ウィーンにヨーロッパの拠点を置いてきた佐渡は、就任時の記者会見で「ウィーンで学んだことを手土産にしたい」と語っていた。新日本フィルではウィーンで活躍した作曲家たちがレパートリーの中心に置かれている。その意味では、ベートーヴェンの「第九」も年末恒例の演奏会であるというだけではなく、音楽監督が重きを置く「ウィーン・ライン」の一公演とみなすこともできるだろう。新たなカラーを身につけつつある新日本フィルの現在地を知るという点でも、大いに興味をひく「第九」となりそうだ。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2023年11月号より)
2023.12/15(金)19:00 横浜みなとみらいホール
12/16(土)14:00、12/19(火)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
12/17(日)14:00 すみだトリフォニーホール
12/18(月)19:00 サントリーホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815
https://www.njp.or.jp