庄司紗矢香(ヴァイオリン) 「フランスの風」
モディリアーニ弦楽四重奏団 ベンジャミン・グローヴナー(ピアノ)

深化を続ける名手がおくる高鮮度の室内楽

 庄司紗矢香は、昨年ガット弦とクラシック弓を用いた古典派音楽で新境地を開き、今年のN響との共演では、レスピーギの「グレゴリオ風協奏曲」というレア作品から豊穣な音楽を引き出した。今や世界トップ級のヴァイオリニストでありながら、そのあくなき探求心は感服の一語。次なる展開にも熱視線が注がれる。

 今秋彼女は、フランスもの、しかも室内楽を聴かせる。共に日本ではほぼ初披露の分野。イギリスが誇るスター・ピアニスト、ベンジャミン・グローヴナー、結成20周年を迎えたフランスのトップ・クァルテット、モディリアーニ弦楽四重奏団との共演(前者は初、後者は欧州でのコラボの成果から出演を望んだとの由)も興味津々だ。

 公演は、武満徹の「妖精の距離」に始まり、武満に影響を与えたドビュッシーのヴァイオリン・ソナタ、ラヴェルの弦楽四重奏曲を経て、ショーソンの「ヴァイオリン、ピアノと弦楽四重奏のための協奏曲」に至るプログラム。武満を起点に近代フランスの室内楽史を遡る構成が意義深いし、武満とドビュッシーではシャープなグローヴナーとの音楽作り、ラヴェルではCDで生気に富んだ快演を展開しているモディリアーニSQの実演が楽しみだ。そして全員が揃うショーソンは、二重協奏曲、合奏曲、ピアノ六重奏曲など多様な性格を有する名品だが、変則編成ゆえに生演奏自体が貴重。むろん本メンバーならば高密度かつ高鮮度の名演が期待される。なお、ツアーの他3公演では平田オリザ演出の演劇と共に演奏されるので、そちらも要注目。深化をやめない名手の新たな世界、文句なしに必聴だ。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2023年8月号より)

2023.9/25(月)19:00 サントリーホール
問:ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212
https://www.japanarts.co.jp

他公演 
2023.9/16(土) 兵庫/豊岡市民会館 文化ホール 
9/18(月・祝) 香川/直島ホール
9/20(水) 神奈川県立音楽堂 
9/21(木) 大阪/住友生命いずみホール 
9/23(土・祝) 水戸芸術館コンサートホールATM
※来日ツアーの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。