公益財団法人稲盛財団(京都市)が、京都市交響楽団や招聘アーティストとタッグを組み、新たに「INAMORIミュージック・デイ」と題した音楽プログラムをこの秋に発足させることが明らかになった。同財団は、京セラ株式会社の創業者である稲盛和夫によって1984年に設立。「京都賞」の運営母体として知られ、音楽分野ではこれまでにメシアン、ケージ、ルトスワフスキ、クセナキス、リゲティ、アーノンクール、ブーレーズなど、現代を代表する音楽家たちが受賞している。
7月26日に行われた記者会見で概要が発表された。プログラムは3つの音楽イベントで構成されている。メインコンサートは11月3日の文化の日に開催。ロームシアター京都と京都コンサートホールが隔年で会場となる。今年はロームシアター京都で、滋賀県大津市出身の杉本優指揮 京都市交響楽団による公演が行われる。1983年に京都市が外山雄三に委嘱した「京都幻想」(京都のわらべうた、民謡をモチーフとして使用)に続き、コルンゴルトのヴァイオリン協奏曲では、京都府亀岡市出身の周防亮介がソリストを務めるのが注目。後半はベートーヴェンの交響曲第7番。中高生300人を無料招待し、ダイナミックなオーケストラ・サウンドを生で体感する機会を提供する。
そのほか、京都市京セラ美術館では、10月に3日間にわたり出張ミニコンサートを実施。美術館という日頃は静謐な空間に、アコースティックなサウンドが響く。京響メンバーによる木管や弦のアンサンブルの演奏を1日に2公演(各30分)おこない、来場者は無料で楽しむことができる。
もうひとつの柱となるのが、スクールコンサート&レッスン。京都には音楽学部を擁する京都市立芸術大学をはじめ、音楽を学ぶ学生も多いが、世界の第一線で活躍する若手音楽家の演奏に触れ、彼らが語ることばからも刺激を受けてほしいという願いのもと、特に高校生に向けての出張授業という形で実施する。2022年は、11月4日に府立亀岡高等学校で、杉本と周防が全校生徒に向けてコンサートをおこなうほか、吹奏楽部や合唱部の指導にもあたるなど、直接交流を深める貴重な機会となる。
京都賞に思想・芸術分野が設けられていることにも象徴されるように、同財団はこの分野での継続的な取り組みのあり方を模索してきたという。金澤しのぶ理事長は、「現在、コロナ禍で息苦しい状況にありますが、こういったときこそ、文化芸術は私たちの心を満たし、高揚させ、精神を深めるものとして大きな役割を果たすのではないか。(これまで力を入れてきた)科学技術と精神文化は両方とも重要で、文化・芸術分野で継続してやっていけるプランを考えていた」と新プロジェクトの趣旨について語った。古都に縁のある音楽家たちによる新しい試みが定着し、音楽の裾野を広げていく契機となることを期待したい。
「INAMORI ミュージック・デイ 2022」コンサート in ロームシアター京都
2022.11/3(木・祝)14:00 ロームシアター京都 メインホール
出演:杉本優(指揮) 周防亮介(ヴァイオリン) 京都市交響楽団
「INAMORI ミュージック・デイ2022」ミニコンサート at 京都市京セラ美術館
2022.10/15(土)13:00、15:00
10/26(水)、10/28(金)11:00、13:00
(各日・各回30分公演)
京都市京セラ美術館 中央ホール
出演:京都市交響楽団メンバー
「INAMORI ミュージック・デイ 2022」スクールコンサート&レッスン
2022.11/4(金)13:00頃 京都府立亀岡高等学校
出演:杉本優(指揮) 周防亮介(ヴァイオリン)
公益財団法人 稲盛財団
https://www.inamori-f.or.jp/220726