文京シビックホールリニューアル × 前橋汀子演奏活動60周年 前橋汀子 ヴァイオリンリサイタル

ベテランの至芸がホールの再開に華やぎを添える

 文京シビックホールは現在改修工事を行っているが、この秋、まず小ホールから公演が再開されることとなった。そのリニューアルを記念して、2022年に演奏活動60周年を迎えた日本を代表するヴァイオリニスト、前橋汀子が登場する。

 一口に「演奏活動60周年」と言っても、前橋の活動は第二次大戦後の混乱期にスタートし、若くして旧ソ連時代のロシアへ留学。さらにはアメリカでも研鑽を積み、より奥深い音楽を求めてスイスに暮らす巨匠シゲティのもとでも学んだ。海外旅行さえ自由にできない時代に、世界をにらみ大きなスケールで始まった前橋の演奏活動は、質量ともに日本の“レジェンド”と言える。

 その貴重な体験を活かした演奏は、機会があれば逃さずに聴いておきたいもの。今回は松本和将をピアノに迎え、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第5番「スプリング」、前橋がライフワークとして今でも積極的に取り上げているJ.S.バッハ「シャコンヌ」を中心に、クライスラーの編曲したドヴォルザーク「わが母の教え給いし歌」「スラヴ舞曲 op.72-2」、さらにはサン゠サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」などのロマン派の個性溢れる作品を集めた珠玉のプログラムだ。

 ヴァイオリンの名曲のなかに、前橋が薫陶を受けたシゲティ、ミルシテインなどの歴史的巨匠の面影を感じつつ、今なお前進を続ける前橋自身の意欲的な音楽の世界を感じることができるはず。リニューアル・オープン公演にふさわしいリサイタルとなるだろう。
文:片桐卓也
(ぶらあぼ2022年7月号より)

2022.10/2(日)15:00 文京シビックホール(小)【チケット完売】
問:シビックチケット03-5803-1111 
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