活躍顕著な気鋭のヴァイオリニスト、髙木凜々子の公式初アルバムは、「カンタービレ」をテーマとする歌心あふれる小品集。清楚で純度の高い美音を持ち味として、A線・D線のハイポジションの温かみ、優しく懐かしいメロディの表現が絶妙で、幾度も郷愁に誘われる。長めの3曲、「シャコンヌ」「ツィガーヌ」は雑にならずに感情の変化を万全に表現し、「詩曲」は丁寧な中に妖艶でドキリとする重い表現も聴かせて(実演でも驚かされた)、いずれも引き込まれる。可憐な笑顔のジャケット通りの爽やかな快さと、時折それを裏切るギャップが心憎い。真の名手誕生を確信させる一枚。
文:林昌英
(ぶらあぼ2022年7月号より)
【information】
CD『リリコ・カンタービレ/髙木凜々子』
ポンセ:エストレリータ/ヴィターリ:シャコンヌ ト短調/J.S.バッハ:G線上のアリア/アルベニス:タンゴ ニ長調/フォスター:金髪のジェニー/ショーソン:詩曲/ドヴォルザーク:ユーモレスク/ドルドラ:思い出/ショスタコーヴィチ:映画『馬あぶ』より「ロマンス」/ラヴェル:ツィガーヌ 他
髙木凜々子(ヴァイオリン)
三又瑛子(ピアノ)
BRAVO RECORDS
BRAVO-10007 ¥3300(税込)