【SACD】藤倉大:ピアノ協奏曲第3番「インパルス」、 ラヴェル:ピアノ協奏曲 ト長調 他/小菅優

 何か美しいメロディーを予感させながら、疾走し続けるオブリガートとなったピアノに、オーケストラが色とりどりのフットノートを挿入していく。聴き手は宙づりにされたまま、目の前の風景だけが万華鏡のように変化していく26分間。藤倉大の異形のコンチェルトを、実演を重ねた小菅優が血肉化した上でのセッション録音だ。ラヴェルの協奏曲に移った瞬間、藤倉作品で姿を潜めていたメロディーがまるで種明かしのように鳴り響き、第2楽章で胃の腑にゆっくりと落ちていった。「WHIM」は藤倉の協奏曲のカデンツァ部を独立させたもの。一瞬で変わる色合いの連続という、この曲のエッセンスを体現している。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2022年7月号より)

【information】
SACD『藤倉大:ピアノ協奏曲第3番「インパルス」、 ラヴェル:ピアノ協奏曲 ト長調 他/小菅優』

藤倉大:ピアノ協奏曲第3番「インパルス」、WHIM〜ピアノ・ソロのための/ラヴェル:ピアノ協奏曲 ト長調

小菅優(ピアノ)
ライアン・ウィグルスワース(指揮)
BBC交響楽団

ソニーミュージック
SICX 10016 ¥3300(税込)