近現代フランス作品をブラームスと併せた独創的なプログラム
ジョナサン・ノットの東響音楽監督も9シーズン目に入った。5月にはいつものように魅力的なプログラムをひっさげて、指揮台に戻ってくる。
14日(東京オペラシティ)、15日(ミューザ川崎)は、透明感あふれる東響サウンドが「牧神の午後への前奏曲」(ドビュッシー)の幻想的な世界を描きだして始まり、フランスの大ベテラン作曲家、パスカル・デュサパンの近作「WAVES」へと続く。オルガンが妖しい魅力を発しながら、カオティックなオーケストラと協奏を繰り広げる話題作だ。ハンブルクの新しいコンサート・ホール、エルプフィルハーモニーで2020年1月に初演された後、モントリオール、パリ、ジュネーヴ、リヨン、ドレスデンと各地で再演されており、デュサパンの代表作になりそうな予感。ノットもこの曲を複数回振っており、日本初演ではさらに深堀りしてくるだろう。独奏はミューザのホールオルガニスト・大木麻理。ドイツ仕込みの才媛だ。
後半はフランスから隣国ドイツに移り、ブラームスの交響曲第3番。一度聴いたら忘れられない哀愁に満ちた第3楽章の旋律をはじめ、作曲家の魅力がコンパクトに詰まった傑作だ。ノットはドイツの古都・バンベルク響のシェフを長く務めた経験があり、いわば本場仕込み。東響とのヨーロッパツアーでもブラームス(第1番)は高い評価を得ている。
万難を排し来日するノットとの絆は、コロナ禍でかえって深まったようにも見える。このコンビならではの、シャープで緻密、すっきりと耳に入ってきて、しかし同時に深い味わいを残すブラームスとなるのではないか。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2022年4月号より)
東京オペラシティシリーズ 第127回
2022.5/14(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
名曲全集 第177回〈前期〉
5/15(日)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511
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