ピエタリ・インキネン(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団

現代の清新なベートーヴェン演奏に期待!

ピエタリ・インキネン (c)Mechthild Schneider

 入国制限の影響で長らく日本の音楽界は著しくドメスティックな状況にあったが、春の訪れとともに雰囲気も変わってきそうだ。春に草木が芽吹くように、停滞していたプロジェクトもまた活発に動き出すのではないか。この4月に予定される首席指揮者ピエタリ・インキネンと日本フィルの2種類のベートーヴェン・プログラムを見ると、そんな期待が湧いてくる。

 インキネンと日本フィルがヨーロッパ・ツアーを敢行したのは2019年。本来であれば翌年のベートーヴェン・イヤーで一層の飛躍を果たすはずだったが、新型コロナウイルスの感染拡大により、両者の共演は久しく実現しなかった。首席指揮者としての任期を2年間延長したインキネンは、ようやく21年11月に2年ぶりの来日を果たす。そして、この4月にふたたびベートーヴェンに取り組む。17日の東京芸術劇場では交響曲第6番「田園」と第5番「運命」という同日に初演された2作品をセットで。23日のミューザ川崎ではシベリウスの交響詩「エン・サガ」にベートーヴェンの交響曲第2番と第4番の2曲の偶数番号作品を組み合わせた。

 もとよりワーグナーを得意とし、現在はドイツのザールブリュッケン・カイザースラウテルン・ドイツ放送フィル首席指揮者も務めるインキネンは、ドイツ音楽を重要なレパートリーとする指揮者。インキネンが求めるのは20世紀の巨匠風でもなければ、歴史的奏法の再現でもない、現代の清新なベートーヴェン像であるはず。コロナ禍の苦悩を勝利へと導くような快演を期待したいものである。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2022年4月号より)

第237回 芸劇シリーズ 
2022.4/17(日)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール
第376回 横浜定期演奏会〈春季〉
4/23(土)17:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 
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