世界に顕示した名コンビによる濃厚なドイツ音楽
“雄弁な指揮者が熱く語る”音楽をそのまま音にする。一見当たり前のようだが、オーケストラの特質との兼ね合いもあって案外容易ではない。だが東京フィルは、2011年7月の初共演以来、大植英次の雄弁な個性を鋭敏に表現してきた。それは、同楽団が伝統的に有するフレキシブルな対応力と、何より相性の良さゆえの成果だろう。「第九」や「春の祭典」やチャイコフスキーなどのハイカロリーでインパクト大なる音楽…。平たく言えば、このコンビの演奏はすこぶる「面白い」。
東京フィルは今年3月、創立100周年記念ワールドツアーを、大植の指揮で行った。彼らはニューヨーク、パリ、バンコクなど、アメリカ、ヨーロッパ、アジア各地で公演。難曲「春の祭典」をはじめとするプログラムで喝采を浴び、圧倒的な成功を収めた。
7月、大植は東京フィルの定期に登場する。まさに“凱旋公演”だ。演目はシューマンとブラームスの交響曲第2番。ハノーファー北ドイツ放送フィルの首席指揮者として絶大な成果を挙げ、日本人で初めてバイロイト音楽祭の指揮台に立った彼にとって、ドイツ本流の交響曲プロは、渾身の王道勝負であるに違いない。それにシューマンの第2番は、敬愛するバーンスタインが最晩年のPMFで伝説の名演を残した作品だから力も入るし、ブラームスの交響曲は、東京フィル初共演時にも1番を取り上げた自信のレパートリー。その初共演時やベートーヴェン等で実現してきた重厚・濃密な快演からも期待は大きい。元来の佳きコンビネーションにワールドツアー成功による絆が加わった今の両者の公演を、聴かずにはおれない。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年7月号から)
第87回 東京オペラシティ定期シリーズ
7/17(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
第850回 サントリー定期シリーズ
7/18(金)19:00 サントリーホール
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522
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