工藤セシリア(ピアノ)

ドビュッシーの音楽に魅せられて…

(C)Bren-ya BA

(C)Bren-ya BA

 フランスで生まれ育ったパリ在住の日本人ピアニスト・工藤セシリアが7月にCDデビューし、リサイタルを開く。父親はフルート奏者の工藤重典。母親もフルート奏者。
「一家にフルート奏者は3人も要らないのだそうです。吹いてみたことはありますが、酸素不足でフラフラになって。倒れるならまず楽器を置いてから倒れなさいと言われました(笑)。母のお腹にいる時から聴いていたからか、今でもフルートの音を聴くとほっとします。ピアノを弾く時もフルートの音色を意識しているかもしれません」

ドビュッシーを広く伝えたい

 注目のデビュー盤は、レコード会社からぜひにと依頼されたドビュッシー集だが、自分で決めたとしても、たぶんドビュッシーだったというほど、彼女の大好きな作曲家だ。
「和音の一つひとつが大好き。透明感があります。弾くといつもモネの画が思い浮かぶのは、やはり印象派だからでしょうか。『子供の領分』は、一曲一曲が短い中でいろんなことをやらなければならなくて難しい。でも可愛らしい曲ばかりなので、ぜひ弾きたいと思いました。『映像』は、特に2曲目など、ふわーっと、溺れちゃうような和音ですよね。『前奏曲』では、有名な〈亜麻色の髪の乙女〉と、派手な〈花火〉など4曲を選びました。『ベルガマスク組曲』の〈月の光〉は、ピアニストだった私の祖母がよく弾いていたそうです。当時、日本でドビュッシーを弾く人は少なかったそうですね。今も健在ですが、私は教えている姿しか記憶になくて。子供の頃、夏休みに帰国して祖母の家でピアノを弾いていると、買い物から帰ってきた祖母がネギを片手に、そこはもっとこう!と教えてくれました(笑)。音楽に関してはすごいパワフルなんです」
 録音はとても楽しい雰囲気で進んだという。
「用意していただいたヤマハのCFXが本当に素晴らしくて! 今まで弾いた楽器の中で一番弾きやすく、やりたいことが全部できました。そういうピアノってなかなか出会えないんです。音色もドビュッシーに合っていると思います」
 資料に「好きな俳優:柴田恭平、舘ひろし」とある。
「母がビデオで見ていたので。父の影響で『水戸黄門』も大好きで、よく真似します(笑)。そうそう、実はリサイタルで弾くデュティユーに、助さん格さんが印籠を出すシーンの音楽と同じ和音が出てくるんですよ。弾くたびに、なんか聴いたことあるなーと思ってたんです」
 なるほど。しかしそこに着目するところが彼女らしい。基本的に控えめな口調の中、ドビュッシーを選んだ理由を聞いた時だけは、「ドビュッシーの音楽を広く伝えたいのです!」ときっぱり言い切った。そんな頼もしいギャップは演奏にも。スレンダーで可憐な容姿だが、そのタッチは鋼鉄のバネのように重厚かつしなやかなものだ。そこから繰り出される多彩な音色のドビュッシーが、彼女のプロとしての第一歩を飾る。
取材・文:宮本明
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年7月号から)

工藤セシリア ピアノ・デビューリサイタル
7/16(水)19:00 ヤマハホール
問:MAP’S 03-6410-5952

CD
『オマージュ・ア・ドビュッシー』
ソニー・ミュージックダイレクト
MECO-1023 ¥2857+税
7/23(水)発売