賞賛博す弦楽四重奏団が、稀少にして魅惑の融合
日本を代表する2つの弦楽四重奏団の共演! 当初2021年4月に予定されていた興味深い公演がついに実現する。かたやウェールズ弦楽四重奏団は、実力派オーケストラ奏者が中心。08年ミュンヘン国際音楽コンクールの第3位受賞以来各地で活躍し、緻密かつ雄大な音楽で魅了している。かたやクァルテット・エクセルシオは、1994年の結成以来第一線に立ち、年60回以上の公演を行っている日本では稀有な常設四重奏団。むろんそれゆえの一体感ときめ細かな音楽が魅力だ。本公演は2017年から彼らが交代で出演してきた紀尾井ホールの「Quartet Plus」の最終回。これまで個々にゲストを迎えてきたが、いよいよ両者が合体した弦楽八重奏が披露される。
演目も妙味十分だ。最初はエクセルシオがモーツァルトの弦楽四重奏曲第7番K.160(159a)を演奏。これ実は第1楽章の主題が有名なディヴェルティメントK.136の終楽章の主題と同じという洒落た選曲でもある。次いでウェールズがウェーベルンの「弦楽四重奏のための緩徐楽章」を演奏。これも実は作曲者のイメージとは異なる絶美の抒情的音楽で、聴けば誰しも感嘆必至だ。次からは八重奏が続く。武満徹の「ソン・カリグラフィⅠ」とショスタコーヴィチの「スケルツォ」(op.11より)は、先鋭的音楽における静と動の対比の趣。特に不協和音が突進する後者は滅法面白い。そして最後は八重奏曲の代名詞たるメンデルスゾーンの名作。この曲は流麗かつ爽快な音楽にひたすら酔いしれればそれでいい。
トップ四重奏団の個性と8本の重層的サウンドを多彩なプログラムで堪能できるこの貴重な機会を、ぜひお見逃しなく!
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2021年12月号より)
2022.2/1(火)19:00 紀尾井ホール
問:紀尾井ホールウェブチケット webticket@kioi-hall.or.jp
https://kioihall.jp