【CD】ブラームス:ドイツ・レクイエム /飯森範親&日本センチュリー響 他

 飯森範親は、ドイツ留学中にこのブラームスの「ドイツ・レクイエム」と出会い、ライフワークとして大切にしてきた。その思いは第1曲冒頭から伝わってくる。これがまた慰めに満ちて美しい。第2曲は無常観や運命を描く葬送の音楽であり、陰鬱さは神の啓示で大転換する。その対照の表現は見事だ。圧巻は第3曲と第6曲で、バリトン独唱で始まり壮大なフーガで終わる。この多様で精緻な音楽は、飯森の構築の中でも頂点を形成する。愛を歌う第4曲と第5曲もきれい。特に後者の石橋栄実の独唱は透明で神々しい。そして終曲の優しい慰めの音楽が余韻を長く引き伸ばす。感動的な名演だ。
文:横原千史
(ぶらあぼ2021年12月号より)

【information】
CD『ブラームス:ドイツ・レクイエム /飯森範親&日本センチュリー響 他』

ブラームス:ドイツ・レクイエム

飯森範親(指揮)
日本センチュリー交響楽団
石橋栄実(ソプラノ)
平野和(バスバリトン)
ザ・カレッジ・オペラハウス合唱団
日本センチュリー合唱団

収録:2019年10月、ザ・シンフォニーホール(ライブ)
マイスター・ミュージック
MM-4098 ¥3300(税込)