明日開幕する、東京二期会のオペラ《トスカ》を前に、ダニエーレ・ルスティオーニが共同インタビューに応じた。あわせて、木下美穂子組のゲネプロ(最終総稽古)を取材した。
取材・文:林 昌英 Photo:M.Terashi/TokyoMDE
(2017.2.13 東京文化会館)
ローマ歌劇場との提携公演であることや、木下美穂子と大村博美という日本を代表するディーヴァたちがタイトルロールを歌うことなどが話題の公演。なかでも指揮がダニエーレ・ルスティオーニであることは最大の注目点になりそうだ。2014年4月の東京二期会《蝶々夫人》の名演で評判になって以来、待望の同団再登場となる。
休みもろくに取れないほど多忙とのことだが、「毎日音楽にかかわっていると、音楽自体がエネルギーをくれるし、音楽に疲れるということはありません。しかも《トスカ》は最も好きなオペラですしね!」と疲労を微塵も感じさせず快活に答えるルスティオーニ。言葉通り、オーケストラから引き出す音は常にハイテンションにしてカラフル。決めの一撃は“スパン!”と最高の切れ味で鳴り渡り、繊細なフレーズは会場の空気を一変させてしまう表現力と美しさ。イタリア人ならではの爽快さと抒情性の両立が見事だし、音楽の“押し引き”が見事。全身を存分に使ってすべての音の表現に没頭する姿は、天性の劇場人であることを感じさせる。
「日本で仕事をするときにとくに感じるのは、日本の方々の全力で仕事に取り組む姿勢です。それも100%ではありません、200%の力で臨むのです!その向上心と、高いレベルで仕事をしようとする精神は特別です」と日本での仕事について表現し、東京二期会と東京都交響楽団にも同様の賞賛を惜しまない。
13日のゲネプロでは珍しい光景があった。第3幕開始時にルスティオーニが登場したとき、なんとオーケストラから歓声と拍手が沸き上がり、楽員たちが笑顔で迎えたのである。こうした光景はめったに見られないことで、良いリハーサルができたことが本当によくわかるシーンだった。結果としての演奏も抜群の水準で、ルスティオーニと都響の相性はかなり良さそうだ。
《トスカ》への思いについて、「プッチーニのほかの名作は東洋やフランスが舞台になって純粋なイタリア音楽とは言えないかもしれませんが、《トスカ》はローマが舞台で、イタリアのアイデンティティがあると思います。プッチーニはここにイタリア人の感情や音楽を盛り込んだと感じるのです。そして、《トスカ》は登場人物が劇中で4人も死んでしまいますし、音楽もドラマティックです。そしてもう一度言いますが、大好きなオペラです!」と熱く語ったルスティオーニ。「話に忠実でありながら知的ですばらしい」というアレッサンドロ・タレヴィの演出と、歌手陣の最高水準の歌唱(主役たちの絶唱!)も含めて、プッチーニの世界を満喫できる公演となるだろう。
《ローマ歌劇場との提携公演》
東京二期会オペラ劇場
プッチーニ:オペラ《トスカ》
2017年2月15日(水) 18:30、16日(木) 14:00、18日(土) 14:00、19日(日) 14:00
東京文化会館
指揮:ダニエーレ・ルスティオーニ
演出:アレッサンドロ・タレヴィ
トスカ:木下美穂子(15日、18日)/大村博美(16日、19日)
カヴァラドッシ:樋口達哉(15日、18日)/城 宏憲(16日、19日)
スカルピア:今井俊輔(15日、18日)/直野 資(16日、19日)*
ほか
(16日のスカルピアは増原英也に変更/19日のスカルピアは今井俊輔に変更)
合唱:二期会合唱団
児童合唱:NHK東京児童合唱団
管弦楽:東京都交響楽団
問:二期会チケットセンター 03-3796-1831
http://www.nikikai.net/