塚越慎子(マリンバ)

ライヴの魅力が溢れるコンチェルト・アルバムをリリース

 ©Shingo Azumaya
©Shingo Azumaya
 今日のもっとも優れたマリンバ奏者の一人、塚越慎子。意欲的な3枚目のCDは、オーケストラとの共演によるコンチェルト・アルバムだ。
「マリンバ協奏曲は、コンサートで取り上げられる機会があまり多くありません。そんな中、2014年に生誕100年を迎えた伊福部昭さんの『ラウダ・コンチェルタータ』を、指揮の岩村力さん、読売日本交響楽団とサントリーホールで共演できることになり、ぜひ録音に残したいと思いました」
 16年は没後10年にあたり、映画『シン・ゴジラ』の影響もあって改めて話題になった伊福部昭。「ラウダ・コンチェルタータ」は1979年に作曲された約30分の大作で、息の長い壮大な楽想と途切れなく続く反復音型とがコントラストをなす。
「最強音から最弱音まで、最低音から最高音まで、重厚な和音から繊細なパッセージまで、マリンバのあらゆる表現を用いた作品です。奏法的には、奏者が研究を重ねて不可能を可能にしなければならないような部分もあります。スコアを読み込み、一音一音すべての意味を考え、スピード感、圧力、角度、和音のバランスなど微妙に変えながら全体を構成しました。マリンバのパート譜は、最後の2ページはずっと同じ音型の反復なのです。そこにオーケストラの旋律が加わって、演奏は緊張と興奮とがどんどん高まり、客席からの熱気も伝わりました」
 アルバムの2曲目に、塚越はまったく曲想の違う協奏曲を選んだ。フランスのマリンバ奏者・作曲家エマニュエル・セジョルネの現代作品である。濃厚なロマンティシズムに満ちた第1楽章と、スパニッシュなクールさを放つ第2楽章からなる。弦楽の共演はこのCD録音のために結成された塚越慎子アンサンブル。
「この曲では、身体の使い方を伊福部作品とまったく変えています。セジョルネはマリンバ奏者なので、ある意味では演奏しやすい曲を書きますが、外国人男性と日本人女性では腕のリーチがまったく違うので、腕の使い方、叩き方を工夫しなくてはなりません。この作品では余韻のある、横に伸びる響きをイメージして演奏しています。雨模様から晴天に変わるぐらいに全く違う曲想を、ぜひ楽しんでいただきたいです」
 小学校へのアウトリーチ、大学での後進指導にもあたる塚越。「ソロ活動と同時に、多くの人と音楽を作っていく活動を続けていきたいですね」と笑顔を輝かせた。また、3月の紀尾井ホールでのリサイタルも決定した。こちらも大いに期待したい。
取材・文:飯田有抄
(ぶらあぼ 2017年1月号から)

塚越慎子 マリンバ・リサイタル
2017.3/2(木)19:00 紀尾井ホール
問:AMATI 03-3560-3010
http://norikot.net/

CD
『伊福部 昭:ラウダ・コンチェルタータ/セジョルネ:マリンバ協奏曲』
オクタヴィア・レコード
OVCC-00135
¥3000+税