山田和樹(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団 特別演奏会

絶好調のコンビが放つ期待のロシア・プロ

 とどまるところを知らぬ快進撃ぶりに、もはやヤマカズと言えば、多くの人が注釈なしに山田和樹を思い浮かべるようになった。そのヤマカズが国内で今、もっとも緊密に仕事をしているのが、正指揮者のポストにある日本フィル。武満とマーラーを組み合わせた大型ツィクルスは現在も進行中だが、柴田南雄没後20周年の昨年には、やはり音楽監督を務める東京混声合唱団とジョイントで大作「ゆく河の流れは絶えずして」を上演し高い評価を得た。また今年に入りオペラにも初挑戦。藤原歌劇団との《カルメン》では、ピットに入ることのあまりない日本フィルを巧みにコントロールして新境地を切り開いている。良く知られた曲でも時に意表を突く大技を仕掛けてくる颯爽とした音楽スタイルに加え、企画面にも独自性があり、いまや首席指揮者ピエタリ・インキネンと共に強力な2発ジェットエンジンとなって日本フィルを上昇気流に導いている。
 さて、絶好調の両者が3月にロシアものをプログラミングした特別演奏会を開く。グリンカ《ルスランとリュドミラ》序曲の後に、ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」。去年のバーミンガム市響との来日公演でも、山田は河村尚子と濃厚なラフマニノフの3番を聴かせてくれたが、今回のソロは福間洸太朗。山田とは同世代で、共演歴もある相性のよいピアニストだ。後半のチャイコフスキー交響曲第4番は、山田のダイナミックなライヴを未体験という人には特にお薦めしたい。コンサート前にはプレトークもあるから、30分早く会場に入ってマエストロの肉声を聴けば、あなたも立派な“ヤマカズ通”だ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ 2017年3月号から)

3/30(木)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911
http://www.japanphil.or.jp/