“和”のテイストを取り入れたユニークな音楽劇
東京文化会館の舞台芸術創造事業として過去にも上演され、好評を博したストラヴィンスキーの実験的舞台作品が3月、同館に再び登場。東京フィルハーモニー交響楽団の首席コントラバス奏者として活躍しつつ、自ら企画する人気のレクチャー・コンサート「文化人類学講座」などでも知られる異才、黒木岩寿が演出を手掛けるということで早くも話題を集めている。
同公演のベースとなるのは、2013年2月にムジカーザで初演された舞台。兵士を演じるパントマイム大道芸人のKAMIYAMA、悪魔役である旧東ドイツ生まれのパフォーマー、ウベ・ワルターをそれぞれ能の「シテ方」や「ワキ方」に見立て、彼らの台詞や内なる声を能楽師の安東伸元(語り手)とその弟子である井上放雲(兵士の声)ら「狂言方」に分業させるなど、“和”のテイストを融合させた斬新なステージ演出は今でも語り草となっている。今回はこれらの個性派キャストが揃って続投、加えて実力派の演奏陣からなるアンサンブルもほぼ同じメンバーでの出演が決定している。もちろん本作品の重要な小道具であり、兵士の“良心”の象徴とも解釈できるヴァイオリンの演奏は、長年にわたり東京フィルのコンサート・マスターを務め、モルゴーア・クァルテットとしての活動では、プログレッシブ・ロックまでこなす幅広いレパートリーを持つ名手・荒井英治が担当。
観客の想像力を刺激して、ステージと客席が一体化するような公演が同館でも実現しそうだ。
文:東端哲也
(ぶらあぼ 2017年2月号から)
3/18(土)15:00 東京文化会館(小)
問:東京文化会館チケットサービス03-5685-0650
http://www.t-bunka.jp/