秋山和慶(指揮) 広島交響楽団

実り多きコラボの濃密なファイナル

 秋山和慶といえば、東響や海外で活躍する名匠だが、一方の重要な業績が地方オーケストラの活性化だ。その代表格が、1998年からシェフを務める広島交響楽団。既成概念にとらわれない発想も光る幾多の公演を通して、同楽団の評価を飛躍的に高めた彼が、この3月、音楽監督・常任指揮者として最後の定期演奏会を迎える。
 演目は、師・齋藤秀雄との思い出の曲であるモーツァルト「ディヴェルティメント K.136」と、最晩年の心象が滲むクラリネット協奏曲、そしてまさに自らを振り返るかのようなR.シュトラウスの交響詩「英雄の生涯」。このファイナルに相応しいプロで集大成を披露する。
 クラリネットは、ウィーン・フィルの若き首席奏者ダニエル・オッテンザマー。生気と伝統の味を併せ持ったソロで奏される至上の名作は、文句なしの聴きものだし、的確かつ明快な構成で音楽の本質を聴かせる秋山のシュトラウスは、玄人筋の信頼度抜群だけに、円熟を極めた表現が注目される。今後終身名誉指揮者となるマエストロと広響の20年近いコラボの成果を、しかと耳に焼き付けたい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ 2017年3月号から)

第368回 定期演奏会
3/18(土)15:00 広島文化学園HBGホール
問:広響事務局082-532-3080
http://hirokyo.or.jp/