日本フィルハーモニー交響楽団 第九交響曲特別演奏会 2016

全力投球の一体感に充ちた、熱い「歓喜の歌」

 年末恒例の「第九」も、最近は多彩な指揮者による斬新な解釈が、これまでにない刺激をもたらしている。だが、迫力あるストレートな演奏を聴きたい方も多いだろう。そんな方には、日本フィルの「第九」がお勧めだ。ここでは、渾身の指揮と全力投球のオーケストラ&合唱団による、熱い「歓喜の歌」を聴くことができる。
 その看板といえるのが、例年登場している小林研一郎。“炎のマエストロ”コバケンの「第九」は、タメやテンポの激変をいとわない、ハイカロリー&ハイテンションの熱演。ダイナミックレンジが広く、高揚感は圧倒的で、感動の渦に巻き込まれること間違いなしだ。また今年は、下野竜也も2公演を指揮する。こちらは引き締まった造型の中で細部まで躍動する「第九」が期待されるし、彼は熱いパッションの面でもヒケを取らない。ちなみに歌手陣は、共に日本を代表するスターが揃う。
 さらに面白いのは前半の演目。コバケンの公演では、石丸由佳のオルガン独奏で、バッハの「アリオーソ」と「トッカータとフーガ」が演奏され、各会場自慢のパイプオルガンの響きを、おなじみの名曲で体感できる。下野の公演は、何とボイエルデューの歌劇《バグダッドの太守》序曲。同曲は日本人が懐かしさをおぼえるメロディをもった明快な佳品で、ベートーヴェンと同時代のフランス人作曲家を対照させるセンスが、いかにも下野らしい。
 もちろん、創立60周年を迎え、サウンドのクオリティも厚みも増している日本フィルの力演も要注目。ここは生気みなぎる「第九」を聴いて、ホットな年末年始を迎えよう!
文:柴田克彦
(ぶらあぼ 2016年11月号から)

指揮:下野竜也(12/17,12/18)、小林研一郎(12/21〜12/27)
12/17(土)18:00、12/27(火)19:00 横浜みなとみらいホール 
12/18(日)14:30、12/22(木)19:00 サントリーホール
12/21(水)19:00、12/24(土)14:00、12/26(月)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911
http://www.japanphil.or.jp