大野和士(指揮) 東京都交響楽団

大野と名手たちが紡ぐ20世紀の“古典”

 東京都交響楽団の十八番といえば、マーラー。昨年4月から音楽監督を務める大野和士も就任披露演奏会で第7番を取り上げ、好評を博した。ただ、音楽監督としての大野は、インバルやベルティーニのようにマーラーのすべての交響曲を一人で担うのではなく、様々な指揮者に都響でマーラーを振ってもらおうと考えている(今シーズンでは、ヤクブ・フルシャが第1番を、アラン・ギルバートが第5番を指揮)。それゆえに、都響で自らマーラーを振るのは、大野にとって、大きな勝負であるに違いない。そして今回、大規模な作品ではなく、マーラーの交響曲のなかで最も小振りな第4番を敢えて取り上げるところに大野の自信が感じられる。大野&都響の2シーズン目の成果を聴くことができるだろう。天羽明惠のピュアな歌声が天上の音楽に華を添える。
 1901年に初演されたマーラーの交響曲第4番は20世紀の開始を告げ、そのあとにベルクやラヴェルなどの作曲家が続いた。この演奏会の前半では、前衛的でありながらロマンティックな薫りを残したベルクの「アルテンベルク歌曲集」とラヴェルのなかではとりわけモダンな作品である「左手のためのピアノ協奏曲」という20世紀前半の傑作を楽しむ。ベルクでも天羽の歌唱が堪能できるほか、ラヴェルでの現代最高のピアニストの一人であるピエール=ロラン・エマールの登場も楽しみだ。フランス出身のエマールが最上のラヴェル演奏を聴かせてくれるだろう。
文:山田治生
(ぶらあぼ 2016年10月号から)

第818回 定期演奏会 Cシリーズ
11/27(日)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール
第819回 定期演奏会 Aシリーズ
11/28(月)19:00 東京文化会館
問:都響ガイド03-3822-0727
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