アレクサンドル・ラザレフ(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団

いよいよショスタコーヴィチ最後の交響曲と向き合う

アレクサンドル・ラザレフ ©浦野俊之
アレクサンドル・ラザレフ ©浦野俊之
 毎回の公演が大きな話題を呼ぶラザレフと日本フィルのコンビによるショスタコーヴィチ・シリーズ。このシリーズ第6回は、グラズノフのバレエ音楽「四季」とショスタコーヴィチの交響曲第15番が組み合わされる。また、ラザレフの首席指揮者としてのラストの定期であることも注目の公演だ。
 作曲者最後の交響曲である第15番が演奏されるとあって、「いよいよ来たか!」と心待ちにする方も多いのではないだろうか。なにしろ、自作や他人の作品からの引用が散りばめられたこの曲は、一筋縄ではいかない。闘病の日々を送っていた晩年のショスタコーヴィチがその生涯を述懐するかのような自伝的交響曲である一方で、さまざまに解釈されうる多数の引用や“ほのめかし”は、時代を先取りしているようにも思える。
 そしてラザレフは若き日にこの問題作の初演に立ち会っている。初演で指揮台に立ったのはショスタコーヴィチの息子マキシム。ラザレフによれば、リハーサルでマキシムはたびたび指揮台を下りて客席に座った父親のもとに足を運んだという。初演のリハーサルを目撃するというのは、同時代を同じ国で生きた音楽家だけが持つことのできる財産といえる。確信に満ちた作品解釈を披露してくれることだろう。
 一方、グラズノフのバレエ音楽「四季」はカラフルな色彩感に富んだ作品である。とりわけ「秋」は吹奏楽版編曲で広く親しまれている。「冬」から始まり、収穫の「秋」で華やかに終わるという、春夏秋冬ならぬ冬春夏秋という構成の妙。ロシアの自然が生み出す雄大な情景を楽しみたい。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年7月号から)

第682回 東京定期演奏会
ラザレフが刻むロシアの魂SeasonⅢ ショスタコーヴィチ6
7/8(金)19:00、7/9(土)16:00 サントリーホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911
http://www.japanphil.or.jp