德川眞弓(ピアノ) & C.W.ニコル(スペシャル・ゲスト)

子どもたちの未来のためにできること

左:德川眞弓 右:C.W.ニコル
左:德川眞弓 右:C.W.ニコル
 東日本大震災から5年。この間にピアニスト德川眞弓は、自らのリサイタルをチャリティとして開催してきた。その良きパートナーと言える存在がC.W.ニコルだ。彼は宮城県東松島市の子どもたちのために「C.W.ニコル・アファンの森財団」を通じて「森の学校」建設を進めている。ニコル氏の思いと活動に賛同した德川は、コンサートの収益を「森の学校」プロジェクトに協賛しているのだ。
「ニコルさんはとても懐深く人間的に大きな方で、どこか少年のような心もお持ちです。だからこそ、将来を担う子どもたちのために作るべき環境を真摯に考えておられます。『森の学校』開校まであと一歩と伺い、今回のリサイタルにかける私のモチベーションも一気に高まりました。2012年のリサイタルと13年リリースのCDでは、ドビュッシーの『子供の領分』を取り上げましたが、ニコルさんに詩の朗読をお願いしました。音楽を通じて、『忘れていないよ』『見守っているよ』という気持ちや祈りも伝えていきたいです」(德川)
「僕は被災地の子どもたちに、未来への夢をもって生きてもらいたいと願い、東松島の森の中に日本一の学校を作ろうと思いました。校舎は今年の12月25日開校予定です。すでに、森と人とが近づくための『ツリーハウス』や、思い出の町と海を一望できる『馬のひづめ展望デッキ』、森の中の自然音を楽しむための『サウンドシェルター』が完成しています。德川さんの音楽はとてもいい。僕みたいにオタマジャクシが読めないけれど音楽好きな人間にもとても親切。こうしてご一緒でき嬉しいですね」(ニコル)
 5月24日のリサイタルは前半がピアノソロ。バッハ=ブゾーニの「シャコンヌ」を取り上げる。
「ずっと敬愛しつつ、まだ自分には…と敬遠していた作品です。しかし祈りや希望、神との対話を感じさせる作品なので、今回挑戦しようと思いました」
 後半はプーランクの室内楽だ。鈴木佐英子とは「フルートとピアノのためのソナタ」を。そして池田肇のオーボエと、小山清のバソンとで「三重奏曲」を披露する。
「フランスならではの軽やかなバソンの響きをぜひ堪能していただきたいですね。ドイツのバスーンとは運指も音色も異なる楽器です。スペシャルゲストにニコルさんにもご登場いただきます。ニコルさんはハートのこもった素敵な歌声もお持ちなんですよ。当日は『森の学校』についてお話くださる予定です」
 子どもたちの未来のために出来ること——このコンサートを通じて、復興への思いを新たにしたい。
取材・文:飯田有抄
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年5月号から)

德川眞弓 ピアノ・リサイタル2016 ― C.W.ニコル 震災復興プロジェクト協賛 ―
5/24(火)19:00 東京文化会館(小)
問:MOMOの会050-3736-2820
一般財団法人 C.W.ニコル・アファンの森財団
http://www.afan.or.jp