白を基調とした舞台に、美しいメロディーが溢れる、愛の物語
ついに新国立劇場でヤナーチェクが!
《イェヌーファ》は、19世紀のチェコの寒村を舞台に、男と女、兄と弟、母と娘のあいだに交錯する、濃密で複雑なドラマを描いた彼の代表作である。望まぬ妊娠の末に捨てられる娘イェヌーファ。彼女から有力者の娘に乗り換える若者シュテヴァ。その弟で、嫉妬から起こした事故で彼女の顔に傷をつけ、悔恨の中で彼女との結婚を望むラツァ。生まれた赤ん坊を「娘の未来のため」と殺してしまう、教会に勤める彼女の継母コステルニチカ。クリストフ・ロイの演出は、冒頭にコステルニチカの監獄収容場面を置き、彼女の回想として本編を導入、白い壁に囲まれた空間を基調に“ムラ社会”の閉塞感を描きつつ、音楽に繊細に反応しながら彼女たちの心のすれちがう瞬間、そして、通い合う場面を積み上げていく。
今回の上演には、ラツァ役のヴィル・ハルトマン、コステルニチカ役のジェニファー・ラーモア、ブリヤ家祖母役のハンナ・シュヴァルツら、ロイ演出のベルリン・ドイツ・オペラ初演時の主要歌手が再集合するので、演技・歌ともに高水準が期待される。特にミヒャエラ・カウネのやわらかくあたたかい歌は、過酷な運命に翻弄されながらも生命力を失わないイェヌーファ像に大きな説得力を与えるものだ。指揮のトマーシュ・ハヌスもバイエルン歌劇場などで活躍するチェコ・オペラのスペシャリスト。オペラの出来を最後に決めるのはやはり指揮者である。彼と東京交響楽団が名歌手達と共にこの劇的な人間ドラマをどう構築していくかも楽しみだ。
文:森岡実穂
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年2月号から)
2/28(日)14:00、3/2(水)18:30、3/5(土)14:00、
3/8(火)18:30、3/11(金)14:00 新国立劇場オペラパレス
問:新国立劇場ボックスオフィス03-5352-9999
http://www.nntt.jac.go.jp/opera