本場の香りとフレッシュな味の一挙両得
「一粒で2度美味しい」とはこのことだ。シュテファン・ヴラダー指揮ウィーン・カンマー・オーケストラの公演に、ピアノの牛田智大が出演する。12歳でユニバーサルからCDデビューし、テレビ等でも話題を呼んだ牛田は、今まだ14歳。現在モスクワ音楽院ジュニア・カレッジに在籍している。ヨーロッパのオーケストラとの初共演となる今回彼が選んだのは、ショパンの協奏曲第2番。これは長年弾き込んできた愛奏曲であり、各コンクール優勝時にも選曲した自信の1曲だ。繊細さと暖かさが持ち味の彼が奏でる甘美な第2楽章は特に聴きものだし、留学での進化を知る意義も大きい。
1946年に創設されたウィーン・カンマー・オーケストラは、ゼッキ、メニューイン、ヴェーグ等の巨匠と共演を重ねてきた名楽団。最近ではアントルモンとのコンビで名を馳せた。オーストリア出身のヴラダーは、ベートーヴェン国際ピアノ・コンクールの最年少優勝者にして、確かな音楽性で評価が高い実力派ピアニスト。指揮者としても10年以上活躍し、2008年から同楽団の芸術監督を務めている。
ヴラダー率いる辣腕オーケストラの明快かつ奥深い演奏は通を唸らせ、曲が「ジュピター」等のモーツァルト作品とくれば、全面に漂うウィーンの香りが万人を酔わせること必至。彼らを聴くだけでも足を運ぶ甲斐がある。むろんピアノを熟知したヴラダーのサポートは、牛田にとっても強い味方。牛田のショパン、ヴラダーのサポート、モーツァルトの名曲、本場コンビの名奏……と聴きどころを挙げれば「一粒で3度も4度も美味しい」。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2014年5月号から)
★6月5日(木)・東京オペラシティ コンサートホール Lコード:39820
問:ジャパン・アーツぴあ 03-5774-3040
http://www.japanarts.co.jp
他公演
5/29(木)・静岡音楽館AOI
*5/30(金)・福岡シンフォニーホール Lコード:82483
*6/1(日)・札幌コンサートホールKitara Lコード:17490
*6/2(月)・函館市民会館
6/3(火)・武蔵野市民文化会館
*6/7(土)・りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館 Lコード:31755
*6/8(日)・大阪/ザ・シンフォニーホール Lコード:52445
*牛田智大出演公演
総合問合:ジャパン・アーツぴあ 03-5774-3040