藤岡幸夫(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

邦楽器とのコラボ&迫力のロシア音楽——響きの多様性を探る

 東京シティ・フィルの第344回定期演奏会に登場するのは首席客演指揮者の藤岡幸夫。邦人作曲家による2曲の協奏曲とショスタコーヴィチを組み合わせた意欲的なプログラムが組まれた。曲は千住明の「月光 —尺八、十三弦とオーケストラの為の—」、大島ミチルの「箏と尺八のための協奏曲 —無限の扉—」、そしてショスタコーヴィチの交響曲第5番。ソリストは箏を遠藤千晶、尺八を藤原道山が務める。

 遠藤はかねてより箏とオーケストラによる協奏作品に挑んできた箏曲演奏家。藤岡とはこれまでにも共演を重ねており、今回の千住作品と大島作品はレコーディングも行っている。邦楽器とオーケストラの組合せが、新鮮でありながらもどこか親しみを覚える豊麗なサウンドを作り出す。しかも今回は両作品とも箏に尺八が加わる二重協奏曲となっており、表現力は多彩だ。箏と尺八にオーケストラの洗練されたサウンドが融合してまぎれもなく日本的な情緒を醸し出す千住明の「月光」、伝統的な3楽章構成のなかに清新でみずみずしい楽想が盛り込まれた大島ミチルの「無限の扉」。ともに予備知識なしで存分に楽しめる作品である。

 ショスタコーヴィチの交響曲第5番は、この作曲家の最大の人気作。さまざまな解釈が可能な問題作であるが、巨大なエネルギーを内包する音楽であることは疑いがない。藤岡と東京シティ・フィルが一体となって、熱い音のドラマを築き上げてくれることだろう。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2021年8月号より)

第344回 定期演奏会 
2021.9/3(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 
https://www.cityphil.jp