東京オペラシティ B→C 濵地 宗

ホルン界の新旗手が挑む“現代の歌”

 注目のホルン奏者・濵地宗が、東京オペラシティの「B→C」に登場する。東京藝術大学出身の彼は、第86回日本音楽コンクール優勝、第10回チェジュ国際金管打楽器コンクール(日本人ホルン奏者初)優勝の実績を誇り、東響、東京フィル等の著名楽団やソリストとの共演、内外の音楽祭やメディアへの出演など多方面で活躍。神奈川フィルを経て、現在群馬交響楽団の首席奏者を務めるほか、なにわ《オーケストラル》ウィンズ、The Sixth Senseのメンバーも務め、スタジオミュージシャンとして様々なレコーディングにも参加している。

 かくも引く手数多の彼にして、東京でのリサイタルは今回が初。それだけにプログラムも盛りだくさんだ。「B=バッハ」に比較的珍しい「歌」の曲が並ぶ点や、ソプラノ歌手(鈴木玲奈)をまじえたシューベルトの〈流れの上で〉が置かれている点が目を引くし、「C=コンテンポラリー」には、ペンデレツキ、バルボトゥ、ベッケルJr.、ホリガーの難曲、そして指揮者・沼尻竜典および映画やアニメが主戦場の沢田完への委嘱新作と多種多様な作品を連ねた、意欲的な内容となっている。ここに共通するのは「様々な言語や文化を昇華させた歌」(本人)。すなわち「ホルンでテキストを表現してみたい」との思いが込められている。確かに濵地は、スムーズな技巧、まろやかな音色と滑らかな運びで“ホルンの歌”を聴かせる奏者。今回はその持ち味が高度な領域で発揮されるコンサートと言っていい。ピアノの共演は中桐望。

 次代を担う奏者がさらなる高みを目指して挑むこのステージ。これは楽曲、演奏ともに期待度満点の一夜だ。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2021年6月号より)

2021.6/15(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール
問:東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 
https://www.operacity.jp